ブラジル、銃規制強化に「暗雲」 暴力で抵抗するボルソナロ支持者たち
銃器ライセンスが4年間で500%増加
ソウ・ダ・パス研究所のランジーニ氏は、一般市民が合法的に保有するアサルトライフルは4万─7万丁と推定している。ランジーニ氏をはじめとするルラ氏のアドバイザーは、市場価格に見合った価格で強制的に買い取るとすれば、政府は1丁あたり1万5000─2万レアル(約39万─52万円)を拠出することになり、国内で最も危険な銃器の一部を回収できると話している。
ボルソナロ政権による銃規制緩和を受けて、70万人近いブラジル国民が「CAC」、つまり「狩猟、スポーツ射撃、収集」目的として登録し、銃器を確保している。CACライセンスの発行数は、2018年以来、約500%増加している。
だが、こうした銃保有者に対する監督は非常に弱い。ブラジル公共治安フォーラムによれば、銃所持許可が期限切れ又は無効となった銃保有者を軍の監査担当者が直接訪問した件数は、昨年は622件、銃器の押収は400丁以下にとどまった。国内の少なくとも10州では訪問調査をまったく行わなかったが、これら10州の住民は約8000万人を数える。
ジェフェルソン事件は、まさにそうした状況で発生した。
ジェフェルソン氏は「民主主義に敵対する行為」を計画した罪を問われてブラジルで最も著名な服役者の1人となり、その後自宅軟禁に移されたにもかかわらず、自宅でアサルトライフル1丁、タンフォリオ製9ミリ拳銃1丁、「大量の弾薬」、そして禁止対象である手りゅう弾を保有していたと自ら証言した。
またジェフェルソン氏は警察に対し、現在20─25丁の銃器を保有しており、一時は100丁も持っていたと述べた。
軍によれば、ジェフェルソン氏は2005年以来CACライセンスを持っていたが、10月の銃撃事件の後、停止された。
ジェフェルソン氏の弁護士であるルイス・グスタボ・クニャ氏は、ジェフェルソン氏はそうした銃器を自宅に保有する法的な資格を有していると説明。「国民から武器を取り上げたいとする政治家は、彼ら(国民)を奴隷にしたがっているのだ、と依頼人は考えている」とクニャ弁護士は言う。
あふれかえる銃
ルラ新政権にとって、障害になるのは監督状況の弱さだけではない。
政権移行チーム関係者は、悪用の意図なく高価な他国製銃器を購入したCACライセンス所持者から訴訟を起こされる可能性を危惧している。
今年、ブラジルの拳銃輸入額は、11月までで、昨年通年の2倍近い7500万ドル(約103億円)相当と過去最高の水準に達した。
セキュリティー・アシスタンス・モニターがまとめた米国の公式統計によれば、ブラジルはボルソナロ政権下で、米国製民間用銃器の輸出市場として上位10位にランクインし、2018年には26位だった順位は今年9位にまで上昇した。米国からブラジルに向けた銃器輸出額は、4年前には320万ドルだったが、今年は10月末までで過去最高の1330万ドルに達している。
需要の高まりを背景に、銃保有に寛容な法制を支持する有権者の声も大きくなっている。
10月の選挙では、銃保有支持派の候補の新しい波が生じた。彼らは保守色を強める連邦議会で議席を確保し、米国式の銃所持に寛容な法制を推進しようとしている。
全米ライフル協会(NRA)を手本とするロビー団体「PROARMAS」のトップであるマルコス・ポロン氏は、連邦議員として初当選を果たし、活気ある銃器セクターを抑圧しようとするルラ氏の取り組みに抵抗すると述べている。
「政治的な復讐(ふくしゅう)心から一夜にして銃器産業を丸ごと破壊しようとするのは、独裁的な手法だ」とポロン氏は言う。「スポーツとしての射撃を楽しみ、合法的な自衛権を行使する人々の権利を保障するために、連邦議会が抵抗するものと信じている」