テレワークの普及で女性の負担が増加したのはなぜか
中には、心身を害する女性もいるだろう。穏やかでないが、それは自殺統計からうかがえる。2019年と2021年の30~40代の年間自殺者数を比べると、男性は4272人から4203人に減っているのに対し、女性は1483人から1746人に増えている。推移を延ばすと、これがコロナ禍以降の傾向であることが分かる。<図1>は、5年間の自殺者数の推移を2019年基準でみたものだ。
コロナ禍以降、10~20代の子ども・若者の自殺者が増えている。友人と会えない孤独、将来展望閉塞、女子にあっては性被害といった事情が考えられる。だが30歳以上では、女性だけで増えている。飲食業やサービス業で非正規雇用女性の雇止めが激増し、経済苦が広がったためと思われるが、家庭生活の負荷が増えたことにもよるのではないか。政府の『自殺対策白書』(2022年度)でも、「有職の女性の自殺が増えた背景には、仕事と家庭の両立に係る生活環境の変化等が影響している可能性が考えられる」と言及されている。
コロナ禍以降、働き方は大きく変わったが、家庭内で女性に負荷がかかるようになってしまっている。男性の在宅時間が増え、時間の余裕ができたからといって、ワークライフバランス度(家庭進出度)が上がるわけではない。在宅勤務や育休の取得等を(機械的に)促すだけでなく、意識の啓発も伴わなければならない。