最新記事

事故

韓国高速道路火災で5名死亡 景観重視のアクリル防音壁が被害拡大か

2022年12月29日(木)21時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
猛火に包まれた高速道路

猛火に包まれた高速道路 YTN News / YouTube

<黒煙を上げて炎上する高速道路。一体なぜこんなことになったのか?>

韓国・京畿道・果川(キョンギド・カチョン)市第2京仁高速道路の防音トンネル区間で火災が発生、死者5名、重傷者3名、負傷者34名という惨事となった。YTNなど韓国メディアが報じた。

29日午後1時50分ごろ、第2京仁高速道路の北義王インターチェンジ付近の防音トンネル区間で火災が発生したという情報が消防へ伝えられた。

現場では廃棄物を回収するトラックがエンジンから出火、この火がトンネルの防音壁に燃え広がり、大規模な火災になったという。また現場では風が吹いており、火が対向車線の車両にも移り、最終的に45台の車が炎上したという。

消防当局は、隊員219人と消防車など94台を投入し、火災発生から2時間半後の午後4時12分ごろ、火災鎮圧を完了した。

目撃者たちの証言と提供された映像等によると、火災発生当時は遠くからでも見えるほど大きな炎が出ており、黒い煙が空を覆っていた。また火がトンネルに沿うように横に広がり、爆発音が聞こえたという証言も出ている。

現場のトンネルでは火は完全に消えたものの、焼け焦げた車の残骸が多数残され、火災の激しさを物語っている。

亡くなった5名の犠牲者は4台の車両から発見されたが、まだ正確な身元は確認できていないという。このほかに、顔にやけどを負うなど重症者が3人、34人が煙を吸い込むなどの負傷をして、うち13人が病院で治療を受けている。

景観を重視したアクリルの防音壁が延焼を拡大

高速道路が黒煙を上げて延焼するという、信じがたい光景が展開された今回の火災。韓国ギョンミン大学消防行政学科のイ·ヨンジェ教授は、過去にも防音壁による火災の拡大があったにもかかわらず、今回また同じような事故が起きたことについて対応策が不十分だったのではないかと指摘している。

「防音壁は必ず必要ですが、美観とか視界確保とかそういう部分だけに気を使いすぎたんじゃないかと思います。過去の事故が今回と同じようなアクリル系の防音壁でした。この素材の危険性が警告されたにもかかわらず、今回の現場を含めて後続措置が不十分だったのではないかという残念さがあります。

自動車から火災が発生したのは明らかです。ただ問題だったのは、上を覆っているのがプラスチック材質のアクリルだということです。アクリルは普通100度くらいになると、ぐつぐつしながらジェル状態になるじゃないですか。それが数百メートルずっとつながっていて、それがセンターラインを越えて反対車線の車の上にも滝のように落ちて、それで火がついたんです。

反対車線にいたドライバーは状況を判断しにくいです。果たして車を捨てて逃げた方がいいのか、それとも車を運転して出た方がいいのか。このような状況を一般の人が正確に判断することは難しいです。そのため抜け出すこともできず、簡単に言えば閉じ込められてしまったのです」(イ·ヨンジェ教授)


■【動画】巨大な黒煙を上げて炎上する高速道路>>


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドローン攻撃」、逃げ惑う従業員たち...映像公開
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中