ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に、「ロシア関与」の疑いが
How Germany's Far-Right Coup Plot Is Linked to Russia
警察に連行される極右組織のメンバー(カールスルーエ、12月7日) Heiko Becker-Reuters
<クーデターを計画した極右組織のリーダーは今も一族が城を保有する貴族の家系。組織とロシアとの関係が疑われている>
ドイツで政権転覆を企てたとして極右テロ組織のメンバーら25人が逮捕された問題で、同組織の活動にロシアが関与していた疑いが浮上している。ロシア政府は関係を否定しているが、貴族の家系で一族が現在も城や狩猟用の別邸などを保有している「ハインリッヒ13世」と名乗る男性がリーダーを務めるこの組織は、ロシア側と接触していたとみられている。
■【写真】バート・ローベンシュタインにあるハインリッヒ13世の「居城」
ドイツ当局は12月7日朝、3000人以上を投入して強制捜査を行い、組織のメンバーとみられる25人を逮捕した。逮捕者には、組織のリーダーで「ハインリッヒ13世」を名乗る、71歳の貴族の家系出身の男も含まれている。
当局によると、逮捕されたメンバーらは、リーダーの男を新政府の指導者にすることを計画していた。男はクーデター計画への支持を得るために、ドイツ国内とロシアにおいて、ロシアの代表者と連絡を取ったとされる。
ドイツ連邦検察庁によると、この組織は「ライヒスビュルガー」と呼ばれる極右勢力や「Qアノン」の陰謀論を支持しているという。ライヒスビュルガーは、ドイツの現代の国家体制を否定し、第2次大戦前の国境に従って存在すべきだと主張している。
組織は遅くとも昨年11月までにクーデターを計画し、「ドイツは現在『ディープステート(影の政府)』のメンバーによって統治されていると固く信じている」と検察は説明。組織は、この体制からの解放が米国やロシアを含む「さまざまな国家の政府、情報機関、軍による秘密結社」からなる「同盟」からの介入を約束するものだと考えているという。
「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」
新国家秩序について交渉するために暫定的な軍事政権を形成することも計画し、「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」と検察庁は明らかにした。
検察庁はまた、逮捕者の中にロシア人の女1人が含まれていると発表した。ドイツの個人情報保護規則に従い「ビタリア・B」と公表されたこの女は、テロ組織とロシア政府高官との接触を仲介した疑いで拘束されたが、接触が成功した「兆候」はなかったという。
過激派について研究するロンドンのシンクタンク「戦略対話研究所」(ISD)の政策・研究担当シニアマネージャー、ヤコブ・グールは、ネオナチやアイデンティタリアン運動など、ドイツに従来から存在する極右勢力は、ロシアへの支持で二分されているとニューズウィークに語った。