西側の対ロ制裁は時間切れ、戦争はプーチンの勝ち?
Putin Capitalizes on Western Uncertainties to Pursue War Goals in Ukraine
インディアナ大学ブルーミントン校のエコノミストであるミハイル・アレクセーエフは、これらの収入源に加えて対外債務が低水準にあることで、ロシアは一連の制裁の最悪の影響を回避できているのだと指摘。「ロシア市民が飢えに苦しむことはない。飢饉が起きることはないだろう」と彼はNPRに述べた。「ただ彼らが生産・消費できるものの種類が減っていくだけだ」
アレクセーエフは、制裁の効果は、どれだけの時間をかけたかによって変わってくると述べた。
「制裁の目的が、ロシア経済を迅速かつ完全に崩壊させることならば、効果は出ていない。ロシア経済は今も機能している」「だがもしもその目的が、時間をかけてロシア経済を弱らせていくことならば、一連の制裁は100%機能していると言えるだろう」
だが残念ながら、制裁の支持者たちには「時間切れ」が迫っているかもしれない。
駐米ロシア大使のアナトリー・アントノフは、本誌とのインタビューの中で、西側諸国は一連の制裁のしっぺ返しを食らうことになるだろう、と警告した。
「制裁によってロシア経済を押さえつける計画は、うまくいかない」「無分別な規制は、米経済の状況をいっそう悪くするだけだ」と、彼は主張する。「米政府は、不可能なことを両立させようとしている」
の世論の支持は低下傾向
ジョー・バイデン米大統領は「必要である限り」ウクライナへの支援を続けると宣言しているが、最近の複数の世論調査によれば、米国内での食品およびエネルギー価格の高騰(それぞれ前年比で9%近くと7.5%高騰)を受けて、対ロシア制裁への支持は低下しつつある。
ジャーマン・マーシャル財団のストークスは、その理由について、「多くの人は、ウクライナでの戦闘はきわめて迅速に収束するだろうと見込んでいた」と指摘する。
しかし、そうした見方に反して戦闘は5カ月目に突入。usinflationcalculator.comによれば、2022年6月までの12カ月のアメリカのインフレ率(年率)は、9.1%に達している。ロナルド・レーガン大統領(当時)の就任1年目だった1981年(10.33%)以来、最も高い水準だ。
調査会社モーニング・コンサルトの調査データによれば、アメリカの有権者のうち、国内の物価高騰を招いても対ロシア制裁を支持する人は47%と、4月の56%から減っている。ウクライナを守るのはアメリカの義務だと考えている有権者はさらに少なく、全体のわずか44%だった。
米上院外交委員会のメンバーで、6月にマドリードで開催されたNATO首脳会議の会合にも出席したクリス・クーンズ上院議員は、この世論の変化を大いに懸念している。
「幅広い国で、戦争の経済的コストや戦争が突きつけるその他の差し迫った問題を受けて、国民の間に戦争疲れが生じることを懸念している」と、彼はニューヨーク・タイムズ紙に語った。