西側の対ロ制裁は時間切れ、戦争はプーチンの勝ち?
Putin Capitalizes on Western Uncertainties to Pursue War Goals in Ukraine
ロシア政府を標的としたこれらの制裁に加えて、米ホワイトハウスによれば2月以降、推定1000社を超える米企業・多国籍企業がロシア事業の停止や撤退を決定しており、それに伴い何千人もの労働者、何百万ドル相当もの生産力に影響が出ている。
NATOの政策立案者たちは当初、一連の制裁によって「ロシアが過去15年分の経済成長を失う」ことになると予想していた。フランスのブリュノ・ルメール財務相は3月に、制裁の目的は「ロシア経済を崩壊させる」ことだと述べていた。
もちろん、ロシア経済は打撃を受けている。対外貿易は大幅に減り、貧困率も上昇している。ロイター通信によれば、インフレ率は14.5%近く、モノ不足が徐々に表面化しており、2022年のGDPはマイナス7.1%になる見通しだ。
だが制裁がロシアの特定のセクター以外の、ロシア経済全体にどんな影響を与えているかについては、まだはっきり分かっていない。
ロシアの政治科学者イリヤ・マトベーエフは米ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)とのインタビューの中で、西側諸国による対ロシア制裁が成功と言えるかどうかは基準によって異なるが、プーチンに軍事行動を思いとどまらせる効果から考えれば失敗だ、と述べた。
ロシアは「戦争前より収入が増えている」
「この戦争に対するプーチンの決意は非常に固い。戦闘の長期化に向けた覚悟もある。現在のような制裁で彼の考えを変えることはできない」と彼女は言う。まして、一部の専門家が当初予想したような「ロシア経済の即時崩壊」は起こらなかった。
ロシアの通貨ルーブルは、西側諸国の制裁発動を受けて2月に史上最低水準まで落ち込んだものの6月には反発し、対ドルで7年ぶりの高値をつけた。ブルームバーグによれば、ルーブルは2022年に入って最も好調な通貨だ。
また米シンクタンク「戦略国際問題研究所」によれば、対外貿易が大幅に減ってはいるものの、ロシア最大の輸出品目である石油と天然ガスによる収益は、前年比で80%近く増えている。
6月に開かれた米上院の欧州および地域安全保障協力小委員会の公聴会で、エイモス・ホックスティーン上級顧問は、ロシア政府が原油や天然ガスの販売で、ウクライナ侵攻の数カ月前よりも多くの利益を得ているかどうかを問われると、「それは否定できない」と述べた。「ロシアが石油でこれほど儲けて、経常収支が黒字化するというのは、予想外だった」