知りたくなかった......イルカはどうやって仲間を見分けているのか
なお、英ガーディアン紙は、イルカの味覚については詳しく分かっていない点も多いとしている。酸味やうま味など、一般的な哺乳類に備わっている味覚は退化したと考えられている。代わりに舌に独自の感覚細胞を発達させており、これで尿に含まれる脂質を検出するなど、味に似た鋭い感覚を得ている可能性があるようだ。
発見は偶然の産物だった
排泄物で仲間を認識していることがわかったのは、偶然から生まれた成果だった。研究者たちの本来の目的は、イルカが本当に個体ごとのシグネチャー・ホイッスルを認識しているかどうかを調べることだった。
だが、ホイッスルが特定の個体を指しているという確証を得るには、なにか別の方法を使い、確かにその個体を指している裏付けを取る必要がある。そこで、個体認識に尿を利用している可能性に思い当たったという。
発想のヒントとなったのは、研究チームが以前耳にした噂だった。ある海洋学者が海中で、野生のイルカが放尿したあと、その周囲を別のイルカが積極的に泳ぎ回っているのをみたという。研究を主導したブルック氏はこの話を耳にし、イルカが尿から何らかの情報を得ているのではないかと考えた。
ブルック氏は米ナショナル・ジオグラフィック誌に対し、この可能性に賭けたのは「あてずっぽうでした」「だから率直なところ、順調にいくとは思っていなかったのです」と打ち明ける。だが、蓋を開けてみれば仮説は証明され、想像を超えた方法で仲間を認識していることが明らかになった。「大きな笑みを浮かべてしまいました」と氏は振り返る。「すごい、これはうまくいったぞ、と。」
通常イルカたちはこの手の実験にすぐ飽きてしまうが、今回は実験期間を通じて熱心に参加していたという。味覚による認識は、イルカたちにとって大切なコミュニケーション手段となっているようだ。