景気後退に備えて米大手銀の現金保有残高が急増、もうただでは引き返せない
As Recession Fears Grow, Consumers Tap Savings While Banks Sock Away Cash
個人向け金融情報提供会社ナードウォレットの最近の調査によると、インフレのせいで、アメリカの消費者の間では、食料、ガソリン、住居費など必需品の支払いのために貯蓄に手を付けざるをえない人が増えている。
また、金融情報誌バロンズによれば、パンデミックの間の景気刺激策として政府が国民に支払った現金給付のおかげで一時減少したクレジットカードの利用残高は、今は再び増加に転じ、年率16%という記録的な伸び率に達している。
物価と債務の上昇は貯蓄率の低下とあいまって、個人消費の減少につながると経済学者は予測する。このところ、記録的な消費需要に牽引されて成長を続けてきたアメリカ経済にとって、よくない話だ。
ペイパルのダン・シュルマンCEOは、最近スイスで開催された世界経済フォーラムで、こうした新たな動向に懸念を表明した。
専門家パネルと共に講演したシュルマンは、生活費の高騰と高インフレのダブルパンチで、アメリカ人は貯蓄を猛スピードで使い果たし、年末までには手元の現金は尽きてしまうだろうと言う。
「低所得者層では、すでに消費が減っている」と、シュルマンは言う。「その傾向が今、中所得者層に移行しつつある」。
短期的解決は困難
国民の経済力と購買力の縮小をめぐる懸念は、政府も共有している。
ジョー・バイデン大統領は5月には「インフレとの戦い」を経済政策の最優先課題として正式に宣言。6月10日に8.6%という予想外の高かった5月のインフレ率が発表されると、すぐさま訪問先のロサンゼルスでメッセージを出した。
「私は、インフレがアメリカの家庭にとって真の難題であることを理解している」と、バイデンは語った。「今日発表されたインフレ率は、われわれがすでに知っていることを裏付けるものだ」
だがバイデンの強気にもかかわらず、年内の経済の見通しは依然として暗い。
ミネアポリス連銀の前総裁で、現在はロチェスター大学教授の経済学者ナラヤナ・コチャラコタは、短期的に経済状況が好転することはない、と見ている。
「ひとたびこのレベルのインフレになると、政策手段によってインフレ率を引き下げるには、いったん失業を増やす方法しかないだろう」と、コチャラコタは言う。「失業とインフレは、どちらも政治的コストが大きい」と、彼は付け加えた。「だから簡単に解決できるような策はない」
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