最新記事

ロシア軍

遺体ばかりか負傷兵も置き去り──ロシア軍指揮官のプロ意識がさらに低下(米戦争研究所)

Russia 'Refusing' to Risk Equipment to Evacuate Wounded in Ukraine

2022年5月31日(火)12時14分
ジェーソン・レモン

ロシア兵の遺体を埋めるウクライナ兵(キーウ郊外のルキヤノフカ、3月28日) Serhii Nuzhnenko-REUTERS

<ウクライナ侵攻で多大な犠牲者を出しているロシア軍。兵士の命より軍の装備を重視する司令官の姿勢がさらなる士気の低下を招いている>

ロシア軍の司令官たちは、ウクライナの戦場において、負傷した兵士の命を救うことよりも装備品を守ることを重視しているようだ。軍幹部は負傷者を避難させるために、物資を危険にさらすことを「拒否」している、という報告が伝えられた。

ロシアによるウクライナ侵攻は、国際的に非難を浴びながら4カ月目に入った。ウラジーミル・プーチン大統領の軍隊は、短期間でウクライナを支配するという当初の作戦に失敗した。プーチンは軍の目標を2度にわたって大幅に縮小し、現在は東部のルハンスク州の奪取に集中しているが、ロシアは依然としてかなりの損害と挫折を味わっている。

米シンクタンク戦争研究所(ISW)は、ロシアのウクライナ侵攻に関するアセスメントを28日に発表。そのなかで、ロシア軍幹部の中に「軍事的プロフェッショナリズムの低下」がみられるとの報告を引用した。

「ウクライナ軍事情報局(GUR)は、ロシア軍司令官が装備品の消耗を避けるために、軍用車を使って負傷兵を避難させたり、前進しすぎた部隊の補給を行うことを禁じていると報告した。戦場で負傷した兵士の救出を拒否するのは、特別な状況でない限り、軍事的プロフェッショナリズムの基本原則に著しく反している。このような行動は、兵士の士気や、負傷する危険を冒してまで戦おうとする意欲に深刻な影響を与えかねない」とISWは分析している。

現地で戦う兵士を軽視

ISWは、この報道を独自に検証することはできないとしながらも、「ロシアの軍事ブロガーによる解説が、状況証拠としてこの情報の正しさをある程度裏付けている」と指摘した。

「ロシアの軍事ブロガー、アレクサンダー・ジチコフスキーは、ロシア軍司令部が優先順位の低いザポリージャ州の前線に送り込んだ予備兵部隊の存在を無視していることを批判した。ロシア軍司令部はウクライナ軍が激しい砲撃を行なっている戦場に、軽装備の歩兵部隊を砲撃の援護なしに送り込み、周辺部隊と交代して休ませることもなかったと彼は言う」と、ISWの報告書は続ける。

さらに「ロシア軍に死傷者が多く、精神に異常をきたす兵士もいるのは、ロシア人指揮官が原因であるとジチコフスキーは指摘した。別の軍事ブロガー、アレクサンダー・コダルコフスキーは、ロシア軍の指揮官がタイムリーに援軍を送らなかったため、現地の部隊は地上戦の合間に休むことができなかったと述べた」と、付け加えている。

一方、プーチンの「私兵」とも呼ばれるロシア国家親衛隊(ロスグバルディア)の兵士100人以上が、対ウクライナ軍事作戦への参加を「拒否」し、解雇された。ロシア軍とは別の国内部隊である国家親衛隊の兵士たちは、戦場に行く代わりに自分の基地に戻ることを選んだと伝えられている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタのHV、需要急増で世界的に供給逼迫 納期が長

ビジネス

アングル:トランプ関税発表に身構える市場、不確実性

ビジネス

欧州自らが未来を適切に管理する必要、トランプ関税巡

ワールド

イラン最高指導者、トランプ氏の攻撃警告に反発 「強
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 5
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 6
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中