食洗機のパーツを戦車に搭載 制裁のロシア軍、チップ不足で苦悶
制裁によってロシア軍はコンピュータチップの入手に苦労している...... REUTERS/Jorge Silva
<国際的な制裁により、ロシアへの技術輸出は7割減少。戦車の補修や精密誘導兵器などの製造に必要な半導体チップの入手が困難になりつつある>
ロシアへの輸出を制限する国際的な制裁措置が、効果をあらわしている。アメリカのジーナ・ライモンド商務長官は5月11日の米上院の公聴会の場で、制裁によってロシア軍がコンピュータチップの入手に苦労していることを明かした。
ライモンド氏は「地上でロシア軍の兵器を発見した際、内部は食器洗い機と冷蔵庫から取り外された半導体だらけだったとの報告をウクライナ側から受けている」と述べ、民生用パーツをやむなく軍事転用している事情を語った。
現在世界的なチップ不足が起きているが、それに輪をかけるように対ロシアでの経済制裁が敷かれている。アメリカ、EU、日本など12ヶ国が対ロシアの輸出品目に制限を導入した結果、技術輸出は現在、70%の減少に至っている。
米ワシントン・ポスト紙によるとライモンド氏は、公聴会での質問に対し、「我々のアプローチは、ロシアへの技術を断つというものであった。軍事行動を続ける能力を損なう技術に関してだ。我々はまさにこれに関して成果を挙げている」と答え、経済制裁が確実にロシアの行動力を奪っているとの認識を示した。
ロシアでチップの供給途絶える
ロシア国内ではほとんどチップを生産しておらず、アメリカなどが規制を敷いた2月下旬以降、禁輸の影響をまともに受ける格好となった。ここ数年ほどパンデミックの影響でチップ不足に喘いでいたところ、侵攻後には半導体生産で世界一を誇る台湾、およびサムスン電子を擁する韓国からの供給も途絶えた。流通量は目にみえて悪化することとなる。
現在残された調達手段は、ほぼ中国のみに限られる。米リパブリック・ワールド誌は、「ロシアの唯一の選択肢は、中国から低級なチップを輸入することだ」と述べ、ロシアの置かれた厳しい現状を論じた。
英インディペンデント紙も同様に、「ロシア軍が西側の技術に依存していることは有名である」と指摘し、「ロシアへの技術の禁輸が同国の地上軍の動きを妨げている」との見方を示している。
商業用機器からも流用
家庭用の食洗機に限らず、本来商業用途の製品からもチップを回収しているようだ。米商務省のロビン・パターソン報道官は、ウクライナ当局からの情報を記者団に対し共有している。それによると、ろ獲したロシア戦車を解体して分析したところ、冷蔵庫ほか商用・産業用の各種機器から転用したパーツが多数発見された模様だ。入手困難となった半導体の数を補っているとみられる。