不妊手術強制に補償を! 欧州トランスジェンダーの闘い
ドイツ司法省の報道官は、離婚を強制されたトランスジェンダーがどれくらいの数になるか把握していないとしており、クルーガー氏も試算の困難さを認める。
「強制的な不妊手術の場合、件数は明白だ。法的なジェンダーを変更した人は全員がそれを経験しなければならないのだから」とクルーガー氏。
「だが、強制的な離婚についてはもっと複雑だ。離婚したのは法律のせいなのか、それとも別の理由だったのか」
離婚を求める法律による影響を受けた人々の多くは、家族に与える影響を恐れて、その事実を公にすることを躊躇している。だがハンブルクで暮らす心理療法士のコーネリア・コストさん(59)は、自ら名乗り出ることによって、政治家に正義の実現を促したいと語った。
「子どもの頃から自分がトランスジェンダーであることは分かっていたけど、結婚して子どもを持てば、それも消えるのではないかと願っていた」とコストさんは言う。前妻とのあいだには2人の子どもを授かった。「私たちは何とかうまくやって行こうとしていた。お互いにとても愛し合っていたから」
だが、法的に女性として認定してもらうためには、法律の規定によりが離婚が不可避だったという。
「国に『離婚せよ』と指示された」とコストさんは言う。彼女は、犠牲になったトランスジェンダーだけでなく、元の配偶者や、子どもがいる場合には子どもにも補償の対象を拡大するよう要求している。
金ではなく謝罪を
調査会社ユーガブが最近行った世論調査では、ドイツでは、トランスジェンダーの人々はすでに十分な権利を得ていると考える人が32%、あまりにも多くの権利を得ていると考える人も20%いる。過去の法律による影響を受けた人の中には、最終的に補償を得られるかどうか疑問視する声もある。
「実現するまでは信じられない」と語るのは、北海沿岸のウィルメルムスハーベンに住む写真家キャスリン・レイムローさん(58)。
法の定めに従いジェンダー変更のための手術を受けたとき、子どもを持つという考えを捨てなければならなかった。「可能性だけでも残しておいてくたなら、と思う」とレイムローさんは言う。
連立政権は、連邦議会において十分な過半数を確保している。だが、補償案には反対もある。
2017年の同性婚合法化に反対した極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、連邦政府の補償案に反対している。
最大野党の保守派キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)にもコメントを求めたが、回答は得られなかった。
司法省の報道官は、具体的にどの程度の額の補償が行われるかは未定としている。
緑の党のナイク・スラウィック連邦議会議員は昨年9月、やはり緑の党のテッサ・ガンセラー議員とともに、ドイツで史上初めてトランスジェンダーを公表している連邦議会議員となった。「この補償の場合、決して『完璧な額』には至らないだろう」と語る。
補償措置を検討する議会委員会に名を連ねるスラウィック氏は、「スウェーデンやオランダで、補償がどれくらい成功したのか検証したい」と言う。
だが、影響を受けた多くの人にとって、補償金は最大の課題ではない。
「何より大切なのは、彼ら(国)が間違ったことをやったと認めて、謝罪することだ」と、レイムローさんは言った。
(翻訳:エァクレーレン)

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