アメリカとインドは率先して中国経済に貢献中──米日豪印「クアッド」が骨抜きの理由
THE QUAD AT A CROSSROADS
ロシア支援をさせないために米国も対中姿勢を軟化
オーストラリアと日本も同様に、中国貿易への依存度を高め続けている。中国はオーストラリアにとって最大の貿易相手国で、日本の最大の輸出相手国だ。そのうえ日豪ともに、中国が主導する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に参加している。
中国の経済的・地政学的勢力拡大にせっせと手を貸すのではなく、クアッドは4カ国間の貿易を拡大するなどの経済協力体制をとっくに築いているべきだった。
残念ながら、バイデン米大統領はインフラからデジタル貿易まで含む「反中」の経済協議体「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を提案しながらも、同地域への関与にいまひとつ及び腰で、主導し切れていない。
アメリカがウクライナ戦争への関与を深めていることも、インド太平洋戦略を混乱させている。ロシアのウクライナ侵攻前から、バイデン政権は中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)副会長を解放するなど融和姿勢を見せていた。
さらに今、欧米の対ロシア制裁効果を弱めないために、中国がロシアを支援する事態をなんとしても避けたいバイデン政権は、中国への態度をさらに軟化させる可能性もある。
米通商代表部は3月には既に、中国からの輸入品にかかる関税の除外対象として352品目を復活させ、懲罰的関税を大幅に緩和した。
クアッドが何度首脳会談を行おうと、明確な戦略と遂行計画なしには効果は望めないだろう。
クアッドの目的は、中国の拡張主義の防波堤となり、インド太平洋の勢力均衡を安定的に保つことのはず。ならば5月24日の首脳会談は、他のあらゆる問題は後回しにしてこの議題に集中すべきだ。