「ドイツは本当に西側の仲間なのか」英ウクライナ特使
Boris Johnson's Ukraine Trade Envoy Says Germany 'Not Totally Our Friend'
メルケルは東独出身だからプーチンを信用し過ぎたのか?(2020年1月、ベルリン) Michele Tantussi-REUTERS
<東独出身のメルケル時代から長年対ロ融和政策を続けた挙句、対ウクライナ武器供与にもロシア産エネルギーからの脱却にも及び腰のドイツは、「再び歴史の間違った側に踏み出そうとしている」と、西側同盟国からの不信が募っている>
ボリス・ジョンソン英首相のウクライナ通商特使に任命されたキャサリン・マイヤー貴族院議員(保守党)は、ロシアの軍事侵攻が続くウクライナへの支援をためらうと歴史の間違った側に立つ恐れがある、とドイツの指導者たちに警告した。
マイヤーは、4月25日にロンドンのウェストミンスター宮殿で行われた地政学評議会のイベントで講演し、ドイツ政府を批判。ドイツはロシアのウクライナ侵攻後、国防費を大幅に増額すると発表したが、EUの対ロシア制裁強化への参加やウクライナへの重火器供与を躊躇しているところを見ると、本当に歴史的な方向転換をしたのかどうか「疑わしい」と語った。
このイベントは、黒海の安全保障に関する地政学評議会の報告書の発表にあわせて開かれた。報告書の趣旨は、ロシアの侵略とそれによる地域の不安定化に直面しているNATO加盟国に対し、地域の同盟国との関わりの強化を求めるものだった
マイヤーはドイツ出身だが、ドイツがウクライナへの支援強化をためらっていることについて、出席者にこう語った。「ドイツはこの点で、またしても歴史の間違った側に足を踏み出しているのではないかと思う」
この翌日、ドイツのラムシュタイン米軍基地でNATO諸国など40カ国で行われたウクライナ支援会議でドイツ政府は戦後初めて、ウクライナに大型兵器を供与すると発表した。戦闘機やヘリコプターも攻撃できる自走式の「対空戦車」だ。歴史的転換にあと一歩踏み出してみせた。
ドイツへの疑惑と批判
過去数週間、ショルツはウクライナに対して戦車など重火器の提供を拒み、非難を浴びてきた。このような兵器の供与は、NATOとロシアの直接衝突という受け入れがたいリスクをはらんでいると、ショルツは主張した。
ドイツの国内企業は、フランス、イタリアの企業とともに、2014年のクリミア併合後にロシアに科されたEUの武器禁輸措置の抜け穴を突いてロシアに武器を売っていたという報道もあり、この点でもドイツは批判されている。
「一方ではドイツがロシアに武器を売っていたことが明らかになり、他方ではいまだにロシアからかなりの量の石油を買っている。ドイツはロシアへの依存度を下げることはできない、経済的に破綻してしまうとショルツは言っている」と、マイヤーは言う。
「それは国防予算を増やすという、ごく最近の発言と完全に矛盾している。あれはドイツにとってかなり重要な発言だった」
ドイツは以前から、東欧の国々で進む反ロシア化に対抗する存在だった。ヨーロッパにおけるドイツの一部の同盟国は長年、ドイツとロシアの経済的な深い結びつき、とくにドイツがロシアから輸入するエネルギーに依存していることに懸念を抱いてきた。この依存関係が、ロシアに対するさらなる制裁を阻んでいる。