フランス極右ルペン、対ロ制裁のインフレ批判で「親プーチン」脱却
米シンクタンク、大西洋評議会の欧州センターでシニアディレクターを務めるバンジャマン・アダッド氏は、仏ルフィガロ紙に寄稿し「全面戦争に再着火したいプーチン氏にとって、西側陣営の分断は最も望むところだ」と指摘した。「マリーヌ・ルペン氏のような姿勢でウクライナ問題に臨めば、ウクライナ国民の大虐殺につながり、国土全体に紛争が広がって長期化し、欧州は長きにわたって経済的な影響を被るだろう」と批判的な目を向ける。
自責の念を否定
ロシアがウクライナに侵攻して以来、ルペン氏はプーチン氏称賛の火消しに努め、自身が心変わりをしたと述べている。ロシアの行動を非難し、ウクライナ難民の受け入れに前向きな姿勢を示し、難民移送のバスを手配するために党員を送り込んだ。
ウクライナへの防衛用兵器の支援にも前向きだ。ウクライナで戦争犯罪が行われているとして、ロシアからフランス公使を引き揚げるようマクロン大統領に進言までしている。
ルペン氏は、3月末にロイターに対し「一度しか会ったことのない人物と知り合いだからといって、自分を責めようとは思わない」と語った。
歴史的にフランスの選挙では、外交政策が有権者の心をつかんだことはない。それでもマクロン大統領は、外交で点を稼ごうと試みている。
プーチンの共犯者
「プーチン氏と共謀しているのは私ではない。ロシアから資金提供を受けているのも私ではない。それはもうひとりの候補者だ」──。マクロン氏は5日、記者団にこう述べた。
とは言えルペン氏側も、マクロン氏自身のプーチン氏に対するあいまいな態度を突くことに成功している。マクロン氏は大統領任期中に、プーチン氏を西側陣営に引き入れようと手を尽くし、ベルサイユ宮殿や南フランスの大統領別荘に招いてきた。
こうした行動は、東欧諸国やバルト諸国を幻滅させた。
ルペン氏はラジオで「ロシアが消滅することはないし、ロシアが中国と確実に同盟関係を結ぶことは、欧州にとって非常にマイナスだ。これはエマヌエル・マクロン氏が5年の任期全てを通じて避けようと努めてきたことだ」と皮肉った。
ロシアがウクライナに侵攻する直前、マクロン氏は鳴り物入りでモスクワを訪問してプーチン氏と会談したが、手ぶらで帰国することになった。マクロン氏は批判を浴びながらも、プーチン氏と交渉を続けたのは正しかったと主張し続けている。
だが、多くの有権者から見れば、マクロン氏は外交に気を取られるあまり喫緊の国内問題をおざなりにしてしまった、ということになる。
イプソスの世論調査では、約6割の人々が「購買力」を最大の関心事に挙げたのに対し、ウクライナを挙げた割合は2割にとどまった。
ノルマンディー地域の街、ビールに住む元葬儀屋のアンドレさんは「ウクライナには関心がない。懐を温かくしたい。それが望みだ」と語った。
(John Irish記者)
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