最新記事

メンタルヘルス

その不安、実は「仮性不安」かも...まず疑うべきは脳ではなく「血糖値の変動」

It’s Not All in Your Head

2022年4月1日(金)17時21分
エレン・ボラ(機能性医学精神科医)

睡眠のトラブルはたいてい、現代社会ならではのちょっとした要素により体内時計(概日リズム)が乱れることが原因で起きる。

私たちの体内時計は、光に強く影響される。私たちは、明るいときに目覚めて、暗いときに眠くなるようにできている。電気が登場するまで、このリズムが乱れることはほぼなかった。しかし、今日は体内時計が誤ったシグナルを受け取り続けている。

私たちは、昼間に屋内で人工の照明の下で過ごし、夜はテレビやコンピューターやスマートフォンの光を浴びて過ごす。テレビや電子機器などのスクリーンが発するブルーライトを日没後に浴びると、メラトニンというホルモンの分泌が抑制されて、就寝すべき時間になっても眠りに入りにくくなる。

乱れた体内時計を正常に戻すには、まず朝一番に明るい自然光を浴びること。夜は暗さを確保するために、デジタル機器の画面の明るさを暗くする夜間モードに設定するといい。日没後はベッドに入るまで、ブルーライトを遮断する眼鏡を着けることも有効だ。

最も効果が大きいのは、寝室にスマートフォンを持ち込まないことだ。スマートフォンは、ブルーライトにより体内時計を乱すだけではない。ソーシャルメディアなどを延々と見続けると、寝そびれて過剰に疲れた状態に陥る。そうなると、コルチゾールというホルモンが分泌されて、寝付けなくなりかねない。

昼間に明るい光を浴び、夜は暗い環境に身を置くように工夫をすれば、睡眠はかなり改善するはず。そうすれば、手ごわい不安の症状もすぐに和らぐかもしれない。

■腸内の健康と炎症

近年、腸の役割は単に食べたものを消化して吸収するだけではないことが分かってきた。腸内細菌が免疫系の司令塔の役割も果たしていることは、よく知られるようになった。

しかし、腸の健康が重要な理由はそれだけではない。睡眠不足と不安が双方向に作用するのと同様に、腸と脳の間でも双方向のコミュニケーションが行われているのだ。

不安になると消化の具合が悪くなりやすいことは、大半の人が知っている。一方、逆のプロセスも見落とせない。腸内環境のバランスが乱れたり、体に悪い食べ物を食べたりすると、その情報が脳に伝わる。腸が脳に対して、不安を感じるように指示する。

また、腸が炎症を起こすと、炎症反応を促進するサイトカインなどの物質が放出される。腸の炎症を引き起こす食材としては、大麦や小麦などに含まれるタンパク質であるグルテン、乳製品、工業的に加工された植物油(例えばキャノーラ油)などが挙げられる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイとカンボジアが攻撃停止で合意、トランプ氏が両国

ビジネス

FRB現行策で物価目標達成可能、労働市場が主要懸念

ワールド

トルコ大統領、プーチン氏に限定停戦案示唆 エネ施設

ワールド

EU、来年7月から少額小包に関税3ユーロ賦課 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中