最新記事

メンタルヘルス

その不安、実は「仮性不安」かも...まず疑うべきは脳ではなく「血糖値の変動」

It’s Not All in Your Head

2022年4月1日(金)17時21分
エレン・ボラ(機能性医学精神科医)

220405P64_FGI_02.jpg

EUGENE MYMRINーMOMENT/GETTY IMAGES

ここで断っておきたいが、仮性不安と呼んだからといって、その苦しみを「ただの気のせい」などと言うつもりはない。あえて仮性と名付けたのは、そういう捉え方をすることで即効性のある対処法が見つかるからだ。不安が体のストレス反応によるものだと分かれば、食生活や睡眠習慣の改善など身体レベルで対処できる。

私の経験から言えば、生理的な要因に起因する不安と分かれば、たいがいは身体レベルでの介入でより早く、より低コストでより効果的に患者の苦痛を取り除ける。

仮性不安を引き起こすよくある要因は、空腹、睡眠不足、カフェインの過剰摂取、二日酔い、精神科の処方薬の効果が切れかけているなど。患者にはこうした要因のリストを見せて、思い当たることがないか考えてもらう。仮性不安であれば、そこから根本的な解決策が見えてくる。

仮性不安を引き起こす要因の代表格を見ていこう。

■血糖値の変動

患者が不安を訴えるとき、私はまず血糖値の変動を疑う。不安に駆られる人は漏れなく糖尿病かその予備軍だ、などと言うつもりはない。血糖値は黒か白、糖尿病か健康かにきっぱり分けられるようなものではない。血糖値異常は程度にかかわらず多くの人に見られる。血糖値の調節が必ずしもうまくいかず、1日のうちに大きく変動するのだ。血糖値が急降下するたびにストレス反応が起き、そのために不安に駆られたり、極端な場合はパニック症状を引き起こしたりする。

現代人の食生活は血糖値を大幅に変動させるため、多くの患者が訴える不安の根源に血糖値異常がある。こうした患者は多くの場合、血糖値を安定させることで非常に速やかに心の安定を取り戻せる。

そのためにはタンパク質と体にいい脂肪分を積極的に取り、食品加工のプロセスで加えられる添加糖類を避け、炭水化物とアルコールの摂取を控えること。食生活の全面的な改善が難しいなら、まずは毎日決まった時間的間隔を置いてスプーン1杯のアーモンドバターか一握りのナッツ類を取るといい。ナッツ類に含まれるオメガ3脂肪酸が糖分過多の食生活がもたらす血糖値の急降下を防いでくれる。

■睡眠不足

不安が不眠の原因になることはよく知られているが、この両者の間には逆の関係も成り立つ。つまり、睡眠不足が不安の直接の原因になる場合もある。

この点は、勇気づけられる材料と言えるだろう。不安を和らげるためにはしばしば長期間のセラピーが必要だが、睡眠の質は概してもっと簡単に改善できるからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 8
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中