最新記事

日本社会

ワンルームより狭い「半ルーム」にしか住めない若者たち

2022年3月9日(水)11時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

「月収14万」がSNSでトレンド入りするほど、若者の貧困化が進んでいる。賃貸の主な顧客は若者だが、独り立ちする年齢層(15~24歳)の年間所得分布を示すと<表2>のようになる。

data220308-chart02.png

全国の519万人、都内23区の43万人の所得分布だが、双方とも200万円に満たない人が多い。中央値を算出すると全国が182万円、都内23区が203万円だ。これは税引き前なので、手取りにするともっと低い数値となる。おそらくは月収14~15万の世界だろう。

ワンルームならぬ「半ルーム」への需要が増すのも道理だ。貧困問題に関する多くの著書がある藤田孝典氏の言い回しを借りると「ウサギ小屋を通り越して鳥かご」だ。これから半ルームの物件が続々と作られ、お金のない若者に供されるのか。「鳥かごに住む若者」という見出しが海外のメディアに踊るかもしれない。

人口減少や高齢化でモノが売れないのに、消費意欲旺盛な(稀少な)若者を鳥かごに押し込んでいるのだから始末に負えない。先月の北京冬季五輪では日本代表選手の勇姿が見られたが、寝具と生活必需品で埋まった3畳ではスキー板など置けるはずもない。よく言われる「若者の〇〇離れ」には、住の貧困も寄与しているのではないか。

真っ当な「住」を保障することが、若者の離家・婚姻を促し、少子化の歯止めにもつながる。新たな世帯を構えるのに必要な家電等の消費も増え、景気も刺激される。山田昌弘教授の『パラサイト・シングルの時代』(1999年)で言われていることだが、20年を経た今も状況は変わらず悪化の兆しすらある。

日本に行くと、鳥かごに押し込められる。こんな評価が定着してしまうと、海外からの労働力も来なくなってしまうだろう。

<資料:総務省『住宅土地統計』(2018年)
    総務省『就業構造基本調査』(2017年)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を

ビジネス

米ギャップ、売上高見通し引き上げ ホリデー商戦好発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中