最新記事

ルポ

「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった

THE RESISTANCE BEGINS

2022年2月26日(土)20時55分
ジャック・ロシュ(ジャーナリスト)
ウクライナ兵

ウクライナ東部ハリコフで武器を手に警戒するウクライナ軍兵士 MAKSIM LEVIN-REUTERS

<ロシアの侵攻を受けて、反撃を決意する市民たちの希望と勇気は燃え続けることができるのか? ウクライナ第2の都市ハリコフの今を現場からレポート>

ジーンズにジャケットを羽織った地元の男たちが、ウクライナ東部の都市ハリコフの街角で車からカラシニコフ銃と弾薬の木箱を降ろしていた。2月24日にロシアがウクライナへ侵攻を開始してから数時間。抵抗は既に始まっていた。

「怖くないとは言わないが、私たちの運命だ」と、機械工の男(安全上の理由から匿名)が言った。「ロシア人が待ち遠しいよ、地獄へようこそ」。また「私たちは戦闘に志願している」と、黒いスニーカーにスエットパンツの男が言う。「ウクライナのためなら死んでも構わない」

2014年と15年にドンバス地方でウクライナ軍と共に戦ったことがあるという数人の男は、私たちの話が終わるのを待って、武器を近くの建物に隠しに行った。

ウクライナ全土の複数の戦線でロシアが破壊的な電撃戦を仕掛ける数日前から、西側諸国はレジスタンスをどのように武装させるかを検討していた。毎年2月に各国首脳らが外交と安全保障について議論する国際会議「ミュンヘン安全保障会議」が18日から開催されており、イギリスのボリス・ジョンソン首相は19日に、「電撃戦の後は報復と復讐と反乱の長く恐ろしい時期が続くだろう」と述べた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は24日、武器を手に戦う意思のある市民に決起を呼び掛けた。ハリコフの街角で私が出会った小さなパルチザンは、地下レジスタンス活動の始まりなのだろう。

「素晴らしい気分だ。復讐の時が来る」

ウクライナ第2の都市ハリコフでは、ロシア軍の襲撃に備え、至る所で通常戦力の配置が進んでいる。たくさんの若いウクライナ兵が、市内に通じる重要なルートで陣地を確保しようと、通りを急いでいた。その1人アレクサンデルは、戦いが迫っていることが楽しみだと語った。「素晴らしい気分だ。われわれの復讐の時が来る」

こうした勇ましい虚勢とは対照的に、市民はロシアの冷酷な攻撃の矢面に立たされている。ウクライナ当局によると24日だけで57人が死亡、169人が負傷。ハリコフ近郊で砲撃されたアパートでは、少年が犠牲になった。

青空と迫り来る爆弾の下、アラ・ガラクティヨノワ(80)はハリコフの自由広場の石畳に立ち、通り過ぎる車に手を上げて乗せてもらおうとしていた。ロシアとの国境近くにある村から、激しい爆撃をくぐって1時間前にたどり着いた。ハリコフ市内に住んでいる姉の元に、何とか避難したいと思っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 市場予

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高の流れを好感 徐々に模

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1

ワールド

米首都の空中衝突、旅客機のブラックボックス回収 6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中