最新記事

北京五輪

ワリエワ、フィギュア個人戦「出場」でもメダルは剥奪?

Will Kamila Valieva Eventually Be Stripped of Any Beijing Olympic Medals?

2022年2月15日(火)16時42分
ゾーエ・ストロズースキ
ワリエワ

疑惑の重圧のなかで2月15日からの個人戦に出場することになったワリエワ(2月10日) Toby Melville-REUTERS

<ROCのワリエワ選手は、ドーピング違反にもかかわらずフィギュア個人戦に出ていいという不可思議な裁定の裏には、メダル剥奪への伏線が>

ドーピング違反の問題をめぐり、北京冬季五輪への出場を継続できるかどうかが注目されていたフィギュアスケートの金メダル候補、カミラ・ワリエワ選手(ロシア・オリンピック委員会代表)について、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は2月14日、出場継続を認める裁定を下した。だがワリエワに対するドーピング疑惑の調査が続いているなか、彼女が今大会で獲得したメダルの扱いはどうなるのかと疑問視する声があがっている。

ワリエワは既に、フィギュアスケート団体戦でロシア・オリンピック委員会(ROC)チームの一員として金メダルを獲得している(ちなみに2位はアメリカだった)。だが国際オリンピック委員会(IOC)が「法的な問題が発生した」として、突如メダル授与式を延期。その後、ワリエワが大会開幕前のドーピング検査で禁止薬物の陽性反応が出ていたことが明らかになった。

15歳のワリエワは、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の規定で「保護対象者」に相当する。ドーピング違反があった場合に実名公表を控えるなど、16歳以上の選手とは異なる処分や対応が適用されるということだ。

IOCは14日、ワリエワが女子シングルで3位以内に入った場合、メダルの授与式は行わないと発表。同様に団体戦のメダル授与式についても、ワリエワのドーピング疑惑に関する調査が終わるまで無期限に延期するとしている。ワリエワは、2021年12月25日にドーピング検査で採取された検体から、血流促進作用などのある禁止薬物「トリメタジジン」が検出されたが、この検査結果が出たのは北京五輪が開幕した後だった。

「気まずい光景」を避けたいIOC

スポーツと法律に詳しい2人の専門家は、メダル授与式を行わないというIOCの決定は、将来的にメダルをはく奪する可能性を残しておくことが狙いかもしれないと指摘する。

米ボルティモア大学の法学教授で、同大学のスポーツ&法律センターのディレクターを務めるディオン・コラーは、本誌に対して、ワリエワが獲得した全てのメダルについて、IOCがはく奪と再配分の可能性を残そうとしているのは「間違いない」との考えを示した。

彼女はまた、IOCはメダル授与式を行わないことで、世界中が「禁止薬物に陽性反応を示した」と知っている選手にメダルを授与するという、「非常に気まずい光景」を避けることができるとも指摘した。

「そのような状況下でメダル授与式を行えば、クリーンなオリンピックをアピールしたいIOCのイメージが大きく損なわれることになる」とコラーは述べ、さらにこう続けた。「だから(メダル授与式を行わないという決定は)イメージのためでもあり、メダルの再配分の余地を残すためでもあると思う。そして規則にのっとって考えれば、メダルのはく奪と再配分が行われるのは確実だと思う」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、4月2─4日にブリュッセル訪問 NAT

ワールド

トランプ氏「フーシ派攻撃継続」、航行の脅威でなくな

ワールド

日中韓、米関税への共同対応で合意 中国国営メディア

ワールド

米を不公平に扱った国、関税を予期すべき=ホワイトハ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中