最新記事

スポーツ

札幌がダメなら「冬季五輪」はいずれ開催できなくなる──カナダ研究チーム

Winter Games Threat

2022年2月3日(木)12時53分
ゾーエ・ストロズースキ
中国ナショナル・アルペンスキーセンター

今月の北京冬季五輪で競技会場となるナショナル・アルペンスキーセンター TINGSHU WANG-REUTERS

<世界各国が温室効果ガスを本気で削減しなければ、スキー競技に必要な雪が足りなくなる地域が続出し、安全な環境で冬季五輪を開催できる都市は札幌だけになってしまう>

遠からず、この地球上で冬のオリンピックを開ける場所はなくなるかもしれない。温暖化の影響で、地域によってはスキー競技に必要な雪が足りなくなるからだ。

気候変動の影響は思わぬところにも及ぶもの。冬季五輪の開催都市は今年の北京を含め21になるが、各国が温暖化ガスの排出量を劇的に減らさない限り、今世紀末には「雪上競技の公正かつ安全な実施ができそうな」都市は札幌だけになるという。カナダのウォータールー大学が主導した研究で明らかになった。

ただしパリ協定で各国が約束した削減目標を本当に達成できれば、どうにか8つの都市では「安心できる気候」が維持され、開催困難なのは6都市にとどまるという。

「気候変動が地図を変える」

「気候変動は冬季五輪の地図を変える。冬季競技で有名な都市の一部は、残念ながら地図から消えてしまうだろう」と、インスブルック大学(オーストリア)のロバート・スタイガー准教授は言う。「欧州にある歴代開催都市の大半は、排出削減を積極的に進めるシナリオでも50年代には限界に近づくか、気候面で開催不可になると予想される」

「IOC(国際オリンピック委員会)は開催地の選定に頭を悩ませるだろう」と言うのは米アーカンソー大学の研究員シーヤオ・マー。「スポーツに人生をささげてきた世界レベルの選手が集うのだから、確実に公正で安全な競技のできる場所を選ばなくては」

今回の3大学共同研究では世界各国のアスリートとコーチに、気候変動が現在と未来の冬季スポーツにどう影響するかを聞いた。すると回答者の89%が、気候変動は競技の実施環境に影響を及ぼすと感じていた。気候の変化が雪上競技の未来に及ぼす悪影響を心配しているとの回答は94%に上った。

「アスリートの視点から、どんな気候と雪の状態が競技の公正かつ安全な実施に必要かを理解し、どの開催都市が将来的にもそうした条件を満たせるのかを探った」と言うのは、カナダの元スキー選手で今回の研究に参加したナタリー・ノウルズ(現在は博士課程に在籍)だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ空軍が発表 初の実

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中