中国の南シナ海進出に悩むフィリピン、切り札導入へ インドから超音速巡航ミサイル購入
フィリピンが中国の南シナ海進出への切り札として導入するインド製超音速巡航ミサイル「ブラモス」 Kamal Kishore - REUTERS
<「自由で開かれたインド太平洋地域」実現のためフィリピン=インドが手を組む?>
フィリピンがインドから超音速巡航ミサイルを導入する方針を明らかにした。1月14日にデルフィン・ロレンザーナ国防長官がソーシャルメディアを通じて明らかにしたもので、中国との間で領有権争いが続く南シナ海で海軍の防衛向上を図ることが目的とされ、中国側の反発が予想されている。
地元メディアなどの報道によるとフィリピンが導入するのはインドの超音速巡航ミサイル「ブラモス(BrahMos)」で、総額で3億7500万ドルのパッケージ契約に漕ぎつけたという。契約にはミサイル本体の他にバッテリー、運用訓練やメンテナンスの訓練要員、ロジスティック・サポートも含まれているという。
「BrahMos」はインドとロシアの共同開発によるもので名前はインドとロシアのブラマプトラ川とモスクワ川に由来しているという。射程約290キロを誇り、フィリピン海軍が自国のEEZ内の海洋権益を守るには十分な能力を有する。インドが最近海軍艦艇からの発射実験に成功し、海上の目標を正確に撃破したという。
ロレンザーナ国防長官は「フィリピン海軍の対艦ミサイルの能力、海軍の防衛能力は格段に向上することになる」と期待を示している。
中国の圧力増す南シナ海
フィリピンは南シナ海南沙諸島にある複数の島や環礁で領有権を中国と争っている。中国は一方的に「九段線」という自国の海洋権益が及ぶ海域を宣言して、南シナ海の大半で自国の領有権、海洋権益の主張を繰り返している。
オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は2016年に中国が主張する「九段線」とその囲まれた海域に対する「中国が主張する権利は国際法上の法的根拠はなく国際法違反である」との判断を下したが、中国はこれを無視し続けている。
このため中国はフィリピンのみならずマレーシア、ベトナム、ブルネイ、台湾と領有権を争っているほか、インドネシアとは排他的経済水域(EEZ)の範囲を巡って異なる主張で対立しているという現状がある。