最新記事

南極

南極に引っ越す人が、事前に必ず受けなければならない「手術」とは?

You Can Relocate To This Town, But You’ll Have To Remove Your Appendix First

2022年1月15日(土)16時36分
ドーン・ゲスク
ビジャ・ラス・エストレージャス

ビジャ・ラス・エストレージャス Jorge Benavente/Wikimedia Commons

<文明から遠く離れた極寒の自然の中で暮らすため、南極にある町の住民には特別な「規則」が設けられている>

南極圏に位置するキングジョージ島には、チリ空軍が管理する基地内にビジャ・ラス・エストレージャスという小さな町がある。特殊な環境で暮らすこの町の住民には、ほかの場所では目にすることのない、ある厳しい規則が定められている。

南極には一般人も住むことができる居住区が2つ存在するが、ビジャ・ラス・エストレージャスは、そのうちのひとつ。住民のほとんどは軍の関係者や科学者だが、家族を連れて何年にもわたって長期滞在することも認められている。そのため、この町には子供も住んでおり、小学校もある。

人口は季節によって変動するが、最大で100人ほど。学校だけでなく郵便局や銀行、そのほか基本的な施設が備えられている。

とはいえここは、年間の平均気温が摂氏マイナス2度を下回る厳しい自然の真っただ中にある町。さらに最寄りの病院までは1000キロも離れている。そこで、冒頭の「規則」が必要となる。それは「引っ越しの前に必ず虫垂を切除してくる」というものだ。

「妊娠」も避けるよう求められる

この町で虫垂炎になってしまえば、即時の手術を受けることができず、命にかかわる事態となる。基地にも数人の医師はいるものの、専門の外科医ではない。

もうひとつ、この町に住んでいる間は「妊娠」を避けるようにも求められている。医療サービスが限られており、リスクが高いからだ。また、こちらは言うまでもないが、冬の間は屋内に留まらなければならない。外出すれば、そこはマイナス70度になることもある極寒の世界だ。

ちなみにキングジョージ島では、ペンギンをはじめとする野生動物への病気の感染などを防ぐため、犬を飼うことも禁止されているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スウェーデン、バルト海の通信ケーブル破壊の疑いで捜

ワールド

トランプ減税抜きの予算決議案、米上院が未明に可決

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月50.2で変わらず 需要低

ビジネス

英企業、人件費増にらみ雇用削減加速 輸出受注1年ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中