南極に引っ越す人が、事前に必ず受けなければならない「手術」とは?
You Can Relocate To This Town, But You’ll Have To Remove Your Appendix First
ビジャ・ラス・エストレージャス Jorge Benavente/Wikimedia Commons
<文明から遠く離れた極寒の自然の中で暮らすため、南極にある町の住民には特別な「規則」が設けられている>
南極圏に位置するキングジョージ島には、チリ空軍が管理する基地内にビジャ・ラス・エストレージャスという小さな町がある。特殊な環境で暮らすこの町の住民には、ほかの場所では目にすることのない、ある厳しい規則が定められている。
南極には一般人も住むことができる居住区が2つ存在するが、ビジャ・ラス・エストレージャスは、そのうちのひとつ。住民のほとんどは軍の関係者や科学者だが、家族を連れて何年にもわたって長期滞在することも認められている。そのため、この町には子供も住んでおり、小学校もある。
人口は季節によって変動するが、最大で100人ほど。学校だけでなく郵便局や銀行、そのほか基本的な施設が備えられている。
とはいえここは、年間の平均気温が摂氏マイナス2度を下回る厳しい自然の真っただ中にある町。さらに最寄りの病院までは1000キロも離れている。そこで、冒頭の「規則」が必要となる。それは「引っ越しの前に必ず虫垂を切除してくる」というものだ。
「妊娠」も避けるよう求められる
この町で虫垂炎になってしまえば、即時の手術を受けることができず、命にかかわる事態となる。基地にも数人の医師はいるものの、専門の外科医ではない。
もうひとつ、この町に住んでいる間は「妊娠」を避けるようにも求められている。医療サービスが限られており、リスクが高いからだ。また、こちらは言うまでもないが、冬の間は屋内に留まらなければならない。外出すれば、そこはマイナス70度になることもある極寒の世界だ。
ちなみにキングジョージ島では、ペンギンをはじめとする野生動物への病気の感染などを防ぐため、犬を飼うことも禁止されているという。