最新記事

新常識

[シン・常識検定] 中国と一帯一路参加国の人口の合計は、世界人口の何%でしょう?

2022年1月14日(金)16時00分
一田和樹

◆中国の一帯一路とは?◆

一帯一路とは中国が展開している経済圏構想である。参加国はすでに120カ国を超え、中国に批判的な国の多いヨーロッパでもG7の一角であるイタリアが参加したほか、ギリシャなども参加している。ロシアと手を組んで北極圏を対象にした「アイスシルクロード」構想も進めている。

一帯一路では中国がローンを提供し、中国企業が港湾などのインフラを整備した後に、相手国が返済困難に陥ってインフラの利用権などを中国に取り上げられることが問題視されている。いわゆる「債務の罠」と呼ばれるものだ。スリランカのハンバントタ港が2017年7月から99年もの間、中国国有企業にリースされることになったことは有名だ。マレーシアでは事業撤退を一度表明し、その後中国側が債務を割り引いたことで事業撤退を免れている。

一帯一路は経済圏構想であるが、経済活動だけではなく、政治、医療、教育、文化、メディア、安全保障など幅広い範囲を網羅している。むしろ中国が一帯一路で行っているのは「超限戦」と呼ばれる「戦争」と考えるべきだろう。超限戦とは1999年に中国で刊行された『超限戦』という書籍で提示された新しい戦争の形のことである。角川新書版からその内容を端的に表している箇所を引用する。 「あらゆるものが手段となり、あらゆるところに情報が伝わり、あらゆるところが 戦場になりうる。すべての兵器と技術が組み合わされ、戦争と非戦争、軍事と非軍 事という全く別の世界の間に横たわっていたすべての境界が打ち破られるのだ」(『超限戦』2020年、角川新書)

超限戦とは戦争のために、軍事、経済、文化などすべてを統合的に利用することである。軍事主体の戦争は、過去のものとなった。もはや軍事と非軍事の区別はない。そう考えたのは中国だけではなかった。2014年にはロシアの新軍事ドクトリンに超限戦に近い戦争の概念が盛り込まれ、欧米諸国はこれをハイブリッド戦と いやおう呼び、世界は否応なしに超限戦、ハイブリッド戦の時代に突入した。近年のフェイ クニュースやネット世論操作も超限戦あるいはハイブリッド戦のひとつである。 おおげさに言うと一帯一路は経済をてこにして世界を変革する超限戦なのだ。


204,203,200_.jpg最新! 世界の常識検定』(集英社文庫)より

●一田和樹
経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。09年1月より小説の執筆を始める。10年、長編サイバーセキュリティミステリ「檻の中の少女」で島田庄司選 第3回ばらのみち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。著書に『原発サイバートラップ』『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』など。当ウェブでコラム「デジタル権威主義とネット世論操作」連載中。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中