[シン・常識検定] 中国と一帯一路参加国の人口の合計は、世界人口の何%でしょう?
◆中国の一帯一路とは?◆
一帯一路とは中国が展開している経済圏構想である。参加国はすでに120カ国を超え、中国に批判的な国の多いヨーロッパでもG7の一角であるイタリアが参加したほか、ギリシャなども参加している。ロシアと手を組んで北極圏を対象にした「アイスシルクロード」構想も進めている。
一帯一路では中国がローンを提供し、中国企業が港湾などのインフラを整備した後に、相手国が返済困難に陥ってインフラの利用権などを中国に取り上げられることが問題視されている。いわゆる「債務の罠」と呼ばれるものだ。スリランカのハンバントタ港が2017年7月から99年もの間、中国国有企業にリースされることになったことは有名だ。マレーシアでは事業撤退を一度表明し、その後中国側が債務を割り引いたことで事業撤退を免れている。
一帯一路は経済圏構想であるが、経済活動だけではなく、政治、医療、教育、文化、メディア、安全保障など幅広い範囲を網羅している。むしろ中国が一帯一路で行っているのは「超限戦」と呼ばれる「戦争」と考えるべきだろう。超限戦とは1999年に中国で刊行された『超限戦』という書籍で提示された新しい戦争の形のことである。角川新書版からその内容を端的に表している箇所を引用する。 「あらゆるものが手段となり、あらゆるところに情報が伝わり、あらゆるところが 戦場になりうる。すべての兵器と技術が組み合わされ、戦争と非戦争、軍事と非軍 事という全く別の世界の間に横たわっていたすべての境界が打ち破られるのだ」(『超限戦』2020年、角川新書)
超限戦とは戦争のために、軍事、経済、文化などすべてを統合的に利用することである。軍事主体の戦争は、過去のものとなった。もはや軍事と非軍事の区別はない。そう考えたのは中国だけではなかった。2014年にはロシアの新軍事ドクトリンに超限戦に近い戦争の概念が盛り込まれ、欧米諸国はこれをハイブリッド戦と いやおう呼び、世界は否応なしに超限戦、ハイブリッド戦の時代に突入した。近年のフェイ クニュースやネット世論操作も超限戦あるいはハイブリッド戦のひとつである。 おおげさに言うと一帯一路は経済をてこにして世界を変革する超限戦なのだ。
『最新! 世界の常識検定』(集英社文庫)より
●一田和樹
経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。09年1月より小説の執筆を始める。10年、長編サイバーセキュリティミステリ「檻の中の少女」で島田庄司選 第3回ばらのみち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。著書に『原発サイバートラップ』『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』など。当ウェブでコラム「デジタル権威主義とネット世論操作」連載中。