「北朝鮮が人間らしい生活だった」 脱北者が軍事境界線越えて北朝鮮入り、軍は気づかず
南北国境の警備隊は気づかず
さらなる問題は国境の警備態勢だ。南北国境のいわゆる38度線には、韓国側2キロ、北朝鮮側2キロの非武装地帯(DMZ)が設定されている。南北のいずれにも鉄条網が設置され、民間人はもちろん、軍人の立ち入りも禁止されるが、一面が地雷原で、立ち入ることは事実上、不可能だ。
韓国側の鉄条網は高さ3メートルで、鉄柵を切断したり、荷重がかかったりすると警報が鳴るセンサーが設置されている。DMZが設定された1953年以降、人の立ち入りが禁止されていることから自然の宝庫となっており、野生動物による警報と考えて見過ごした可能性が指摘されている。
DMZの見過ごし事件は、たびたび起きている。2008年4月27日午後4時頃、板門店の近くで、北朝鮮軍の将校が白旗を振って亡命意思を表明したが、韓国軍は気づかなかった。将校は拳銃を撃ったが反応はなく、将校は監視所まで歩いて扉をノックした。
2012年にも同様の事件があった。11月2日、北朝鮮の兵士が韓国側の鉄柵を越えたが、韓国軍は北朝鮮兵士が警備隊の建物の窓をノックするまで気づかなかった。今回、越北したキム氏は2020年11月、軍事境界線の鉄柵を越えて入国したが、身柄を確保するまで10時間以上かかった。
国会の国防委員会全体会議で、ずさんな警備に対し、与党議員は「いつから南北間の往来が自由になったのか。(越北を見逃した) 第22師団に行けば南北の離散家族も再会できそうだ」と皮肉り、野党・国民議員は「スパイが行き来している」と批判した。