人体に新たな部位が発見される アゴの筋肉の奥に、未知の第3層
さらに時代を経て2000年代前半になると、いくつかの研究が3層構造を指摘しはじめるようになる。だが、これらはいずれも表層を2つの層に分けて捉え直す内容であり、「咬筋の筋突起部」とは別のものであった。新たに発見された第3の層の存在と位置を正確に指摘したのは、今回の研究が初となる。
研究チームは、「いくつかの既存のテキストは3層目が存在する可能性に触れていますが、その位置に関しては非常に不正確でした」と指摘している。メゼイ博士らが研究に踏み切った背景には、資料によって矛盾するこうした説明の真相を突き止めたいという思いがあったという。
人体に眠っていた未知の部位
研究により、入念に研究が行われてきた人体の、それも顎という身近な部位において、新たな筋肉の層が示される形となった。ベゼル大学はツイートを通じて研究を紹介し、「人体構造はいまだに、私たちを驚かせるようなサプライズをいくつか秘めています」とコメントしている。
研究に参加したバーゼル大学のイェンス・クリストフ・トゥルプ教授は、「過去100年間で解剖学の研究は徹底的にされ尽くしたと一般に考えられているなか、私たちの発見はいわば、動物学者が新たな脊椎動物を発見したようなものです」と語り、研究の成果に自信を示す。
米技術解説誌のインタレスト・エンジニアリングは今回の発見を取り上げ、「何年もかけて解剖学の授業をしていることを考えると、未知の器官や筋肉などが発見されることはいささか奇妙に思えるかもしれない。しかし、こうしたことはめずらしくないのだ」と述べ、2020年には頭の深部に未知の唾液腺が発見されたと紹介している。人体にはさらに知られざる器官が眠っており、今後も発見が続く可能性がありそうだ。