最新記事
動物動物界一の酒豪、ハムスターの強さは別格
写真はイメージ Conny V-iStock
<アルコールを経口摂取した場合、ハムスターの肝臓はエタノールの処理に「非常に効率的」で、血液中にはほとんど含まれないとされる>
世界一の酒豪と聞けば、体躯の良い人物。動物界なら、巨漢のゾウとかサイが思い浮かぶが、実際はそうではない。ゾウは体は大きくても、アルコール代謝の遺伝子を欠いているから酒に弱い。人間はというと、発酵した果物を地面から拾って進化してきた先祖のおかげで、他の生き物に比べるとアルコール耐性はそれなりに強い。本当のチャンピオンは、あなたが予想するよりも貧弱で可愛らしい生き物だ。
先日投稿された英国の医師トム・ロートン氏のツイッターによると、動物界で最も酒に強いのはハムスター。その強さは別格だ。「ハムスターはアルコールが大好きで、水よりもエタノール(アルコール濃度15%)を飲むことを好む。相対的に人間が死に至るような量にも耐えることができる」という。
In conversation with @microlabdoc earlier, I discovered that not everyone knows of the hamster's prodigious capacity for alcohol.
— (@LawtonTri) November 18, 2021
They love it so much they prefer to drink 15% ethanol instead of water, and can tolerate relative quantities that would kill a human. 1/ pic.twitter.com/n32n8XRGfJ
ロートン氏の投稿は、アラスカ大学アンカレッジの心理学者、グウェン・ルプファーが行った研究を参考にしている。それによると、ハムスターは1日あたり1キロあたり20グラムのアルコールを平気で飲むそうで、これは標準的な男性が1日に21本分のワインを摂取するのに匹敵する。
自然界にもアルコールは存在する。野生では、冬に備えハムスターは巣穴にイネ科の牧草ライグラスの種や果物を蓄えるが、時間が経るにつれ発酵したもので食いつなぐ。ラボでは、ハムスターに水かアルコールを選ばせるとアルコールをとるそうだ。
ルプファー博士の調査によると、経口摂取されたアルコールは腸から肝臓に直接行き、エタノールは分解され始める。ハムスターの肝臓はエタノールの処理に「非常に効率的」で、血液中にはほとんど含まれないとされる。しかし、注射で投与された場合、エタノールは肝臓を迂回して血流をめぐり脳に侵入する可能性がある。ぐらつきを引き起こし転倒する。
ハムスターは酩酊しない
ハムスターがアルコールに強いことは、少なくとも1950年代から知られていた。ラットにアルコールを飲ませるには、遺伝子系統を選択的に交配するか、砂糖とエタノールを混ぜたものの味を覚えるまで慣らす必要があるが、ハムスターの場合は、「ペットショップで買ってきた個体に与えることができる」とフロリダ大学の中毒研究者ダニエル・ガリック氏は言う。
小さな酒豪を酔わせるのに一体どれほどのアルコールが必要かーー2015年にBehavioral Processes誌に発表された論文が一つの答えを示している。酩酊度を、ふらつきがないことを示す0点から転倒して起き上がれない状態の4点まで、スコアで評価した結果、ハムスターは最高濃度でアルコールを経口摂取しても0.5を超えることはなかった。
ハムスターの優れたアルコール耐性はライフスタイルへの適応の結果という見方があるが、前述のルプファー氏は「無糖のエバークリア(ウオツカ)のボトルをケージに置くだけで、ハムスターは大喜びする」と、その酒豪ぶりを話す。