最新記事

韓国

なぜ文大統領は朴槿恵前大統領を特別赦免したのか? 次期大統領選に影響か

2021年12月27日(月)13時16分
佐々木和義

朴前大統領の態度によっては保守分裂の可能性

特別赦免決定に先立つ12月21日、朴槿恵前大統領の実妹の朴槿令元育英財団理事長が、次期大統領選挙に出馬する意向を表明した。

現在、3月9日に行われる大統領選挙に向けて与党・共に民主党の李在明候補と保守系野党・国民の力の尹錫悦候補が争っているが、いずれも支持率30%前後で拮抗している。

韓国の保守支持層は大きく3つに分けられる。李明博元大統領の下で頭角を現したMB(明博)派と朴正煕元大統領を信奉する親朴派、反文在寅派だ。

国民の力の尹錫悦候補は崔順実ゲート事件の捜査を担当し、19年には朴前大統領の刑の執行停止を拒絶した責任検事だったことから親朴派の間では、尹候補に対する根強い反感がある。また、反文在寅派には、朴前大統領を糾弾して旧セヌリ党を離脱した後、復党した人たちもいる。

朴槿恵前大統領は「病院にいる間は政治家をはじめ誰とも会わない」と弁護士を通じて明らかにしており、尹錫悦候補に対して否定的なメッセージを出す可能性はほぼないとみられるが、朴前大統領の態度によっては、親朴派が朴槿令候補支持に流れる可能性があり、逆に保守系が朴前大統領を優遇すると、朴前大統領を糾弾した人たちが離れるなど、保守分裂の可能性が浮上する。

与党も特赦に困惑している。与党幹部や李在明候補は、朴槿恵前大統領と李明博元大統領の恩赦に反対の立場を表明してきた。朴槿令氏が大統領選への出馬を宣言する前の12月17日、法務部は年末の特別赦免に朴槿恵前大統領や李明博元大統領など政治家を含まない方針を示していた。これまでの主張と真逆の決定に与党離れを懸念する。

今回の赦免対象から外れた李明博元大統領が次期大統領選に影響を及ぼす可能性はほぼない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中