最新記事

ウクライナ

ロシア、ウクライナのNATO加盟確約撤回を要請 EUは侵攻なら代償と警告

2021年12月11日(土)09時13分
ウクライナ国旗とEUの旗

ロシアは10日、旧ソ連のウクライナとジョージアの将来的な北大西洋条約機構(NATO)加盟を巡る2008年の確約を撤回するよう要請した。6日撮影(2021年 ロイター/Gleb Garanich)

ロシアは10日、旧ソ連のウクライナとジョージアの将来的な北大西洋条約機構(NATO)加盟を巡る2008年の確約を撤回するよう要請した。同時に、NATOに対しロシアと国境を共有する国に兵器を配備しないと確約するよう求めた。

こうした中、欧州連合(EU)はこの日、ロシアがウクライナを侵攻すれば代償を払うことになると改めて警告した。

ロシア外務省が発表した声明によると、ロシアは定期的な防衛協議開始のほか、ウクライナのNATO加盟に対しロシアに実質的な拒否権を与えることなどを提案した。

NATOはウクライナを加盟させ、ロシアを標的とするミサイルシステムを同国に配備する方向に動いているとし、「こうした無責任な行動は、ロシアに対する容認不可能な安全保障上の脅威となり、欧州における大規模な紛争に至る、深刻な軍事上のリスクが誘発される」と警告。「欧州安全保障の根本的な利益のために、『ウクライナとジョージアは将来的にNATOに加盟する』とした08年の確約は、正式に撤回される必要がある」とした。

これに対し、NATOのストルテンベルグ事務総長は、NATOの姿勢は変わらないと強調。「どのような安全保障体制に属したいのかを含め、あらゆる国が自国の道を選択する権利を有することは基本原則だ。NATOとウクライナの関係を決定するのはNATO加盟30カ国とウクライナであり、他の国ではない。大国が影響力を持ち、他の加盟国の行動をコントロールできるようなシステムをロシアが再構築しようとしていることは容認できない」と述べた。

また、EUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長はドイツのショルツ新首相との共同記者会見で「侵攻には代償を払う必要がある」と指摘。ただ、ロシアが侵攻に踏み切った際に他のパートナー国と共に導入する可能性のある対ロシア追加経済制裁について、公の場で協議しないとし、「ロシアの行動次第だが、EUはロシアとの良好な関係を望んでいる」と語った。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、紛争が続いているウクライナ東部とクリミアの将来を巡る住民投票の実施を否定しないと表明。実施の方法や時期については明らかにしなかったものの、和平プロセスの進展とロシアとの対立解消に向けた選択肢の一つになるとの考えを示した。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 8
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中