親と生き別れ米国へ 再会待ち望むアフガニスタンの子どもたち
親や法定後見人の同伴なしにアフガニスタンから米国に逃れてきた子どもたちは約1300人に及ぶ。写真はいとこと歩くサダムさん。ワシントン州レントンで10月30日撮影(2021年 ロイター/Lindsey Wasson)
10歳のマンスール君は、8月にイスラム主義組織タリバンが権力を奪還したアフガニスタンから辛うじて脱出した。現在は米ワシントン州の親戚のもとで安全に暮らしているが、母国に戻れるのかどうか大人たちに毎日尋ねている。
米軍が撤退し、さらには7万人以上のアフガニスタン人が米国に脱出する混乱の中で、マンスール君は両親と兄弟と離ればなれになってしまった。
マンスール君は親戚のショゴファさんの幼い子どもを抱いて、首都カブールの空港に足を踏み入れた。その瞬間、銃声が響き、兵士らがマンスール君と両親を隔てるゲートを閉鎖してしまった。空港で3日間過ごした後、彼はショゴファさんと共に飛行機に乗った。残りの家族も続く便で追いかけてくるだろう、とショゴファさんは願っていた。
ショゴファさんは、自身の幼い子ども2人とマンスール君、それに他の親戚らと、ニュージャージー州の米軍基地にたどり着いた。数週間後、シアトルに住む姉のニロファルさんと合流した。マンスール君の両親は現在、アフガニスタン国内に身を潜ませている。父親が同国政府で役職に就いていたためだ。
ニロファルさんによれば、このところマンスール君は独りポツンと座っている時間が長く、他の子どもたちと一緒に遊ぶことはめったにない。一家は、アフガニスタンに残るマンスール君の両親をはじめとする親戚の安全を考え、記事にはファーストネームだけを掲載するよう希望している。
マンスール君をはじめ、親や法定後見人の同伴なしにアフガニスタンから米国に逃れてきた子どもたちは約1300人に及ぶ。この数はこれまで報道されていなかったが、保護者のいない未成年者への対応を統括する米保健社会福祉省(HHS)が明らかにした。
支援者らによれば、アフガニスタンからの未成年者には、不慮の事態によりカブールで親と離散してしまった者が多いという。
こうした未成年者が置かれた複雑な状況は、言葉の壁や、米国内に保護者のいない子どもを引き取る文化的に相性のいい里親家庭が不足していることと相まって、米国政府に容易に解決できない課題を突きつけている。何より困るのは、現在米国にいる子どもたちと国外に留まっている親たちを再会させるための明確な制度が存在しないことだ。
匿名を条件に取材に応じた米当局者2人は、バイデン政権が、子どもがすでに米国内で暮らしている場合は親が迅速に入国できるようにする措置を検討している、と述べた。
人道的理由による米国入国を申請しているアフガニスタン人は多く、例外的な迅速対応がなければ、国外の親たちは長く待たされてしまう可能性が高い。
子ども・成人の避難民のほとんどは米国への一時的な入国が認められているだけで、強制送還の心配はないものの、恒久的な法的地位が与えられるわけではない。子どもたちが複雑な移民制度に対応していくには法的な支援が必要になる可能性が高い。