中国ゼロコロナ政策は「コロナの煉獄」 米、香港紙などが批判
四川省成都、ロックダウンされた住宅地の近くで新型コロナの感染検査を受ける人々 cnsphoto/REUTERS
<感染者ゼロを掲げる中国当局だが、市民生活に大いなる犠牲が。デルタ株にゼロコロナ路線は無意味との指摘も>
新型コロナウイルスによるパンデミックの長期化に伴い、各国政府は「ウィズコロナ」の考え方に舵を切りつつある。ウイルスの完全な駆逐は非常に難しいとの前提に立ち、医療と経済のバランスを模索するアプローチだ。
一方で中国政府は、新型コロナを国内からほぼ完全に駆逐する「ゼロコロナ」戦略を堅持する。入国時の厳しい隔離措置により水際対策を万全のものとするほか、国内での感染者発生の際には厳格な対応を取っている。しかし、市民生活への影響は甚大だ。
米公共ラジオのNPRは、中国南西部の雲南省瑞里の町が昨年3回もロックダウン対象となったと報じている。ある女性は45日間の隔離生活を命じられ、その間十分な食糧の供給も受けられなかった。
別の夫婦も、不衛生で湯も出ないホテルの一室に突如隔離され、食事も不十分だったという。家には4歳と14歳の娘だけが取り残された。隔離費用は自己負担となり、ホテル代を賄えない人々は貨物用コンテナでの生活を強いられる。
都市部でも厳しい対応が続く。10月30日には、感染者1名が上海ディズニーランドを訪れていたことが判明した。翌夜、警察の部隊がパーク全体を突如として封鎖した。滞在中だった3万人以上の入園者が深夜まで帰宅を許されず、寒さのなか保健所職員による全数検査を待った。
ブルームバーグは動画のなかで、ほかにも厳格な対応が実施されていると報じる。北京では感染した学校職員1名がワクチン接種に臨んだことで、同じ会場に居合わせた他の職員が務める小学校すべてを閉鎖した。生徒たちは下校を認められず、あまりの寒さに保護者が毛布を届ける一幕もみられた。
「ゼロコロナ中止は代償伴う」 中国紙が社説で警告
私生活を大きく制限するゼロコロナ政策に関し、中国国内では肯定的な評価が出る一方、SNSを中心に疑問の声も上がっている。これに対し中国共産党の関連紙『環球時報』は編集長名の論説を掲載し、ゼロコロナを廃止すれば大きな代償が伴うと警告した。
11月4日付の同記事は、「ゼロコロナ政策の維持は高くつくが、廃止はさらに高い結果を招くことに」と題するものだ。記事は一部でゼロコロナへの批判が聞かれるとしたうえで、「私は彼らに反対する」「私が出会った人々のほとんどは、中国のダイナミックなゼロ感染者政策を支持している」と主張する。
記事はさらに、中国は医科学上のブレイクスルーを目指すべきだとも述べている。これにより、中国は「いかなるステージにおいても戦略的主導権を発揮できる」と社説は結んでいる。