最新記事

中国不動産

恒大物業、株売却頓挫の舞台裏──習近平の厚意を蹴った恒大集団

2021年10月22日(金)22時57分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
恒大本社

経営危機に陥っている恒大集団 Aly Song-REUTERS

習近平父子の大恩人と関係する不動産開発企業・合生創展集団が恒大集団傘下の恒大物業の株を買うべく契約が成立していたのに、恒大側に欲が出て、契約を破棄した。契約と破棄をめぐる舞台裏を追う。

合生創展と恒大物業との契約内容と破綻プロセス

10月14日のコラム<恒大救済企業の裏に習近平の大恩人の影が>で述べたように、「華南の五虎」と呼ばれる広東省のディベロッパーの一つである「合生創展集団」が恒大集団傘下の恒大物業の50.1%(当時は51%と言われていた)の株を購入する交渉が進んでいた。

10月20日の合生創展集団の告知によれば、10月1日に契約が締結されて10月12日から実行されることになっていたようだ。ところが契約が締結された後になってから、恒大集団側が「イチャモン」を付けてきたため、この売買契約は破綻してしまったという。

合生創展の告知に基づいて、契約内容と破綻した経緯を考察してみたい。

1.この契約書は大きく分ければ合生創展集団と恒大集団との間で交わされたものだが、具体的には合生創展側はその傘下にある物業(不動産管理運営)関係の「合生活科技集団」が購入側に当たり、恒大側は、その完全子会社であるCEG Holdingsが当たった。恒大集団はCEG Holdingsの保証人となっている。肝心の恒大物業は「目標公司」(売買対象となる会社)という位置づけだ。

2.契約では、合生創展が約200億香港ドル(正確には20,040,000,350.70香港ドル)(約2,933億円)を恒大物業に支払うことになっていた。この際、1株3.70香港ドルとして計算された。

3.恒大物業は恒大集団およびその関連会社との間で未精算の貸し借りがあるので、この経費で全て清算して、借金のない(きれいになっている)恒大物業の株を合生創展が購入することになっていた。

4.恒大物業は、200億香港ドルの中から恒大集団とその関連企業に返済した残りの金額をCEG Holdingsに渡すことになっていた。

5.ところが契約が締結されてから(10月1日を過ぎてから)、CEG Holdings(およびその保証人である恒大集団)が、合生創展は200億香港ドルを恒大物業にではなく、CEG Holdings(恒大集団)に直接支払えと言ってきた。

6.それは契約に違反しており、CEG Holdingsに支払ったのでは、果たして購入時点で恒大物業が借金のない「きれいな企業」になっているか否か保証がないので、それは契約違反であると、合生創展側は受け付けなかった。

7.しかし、 恒大側は10月12日までに恒大物業の株を合生創展に売らなかった。そこで合生創展は10月13日に恒大側に契約の履行を催促したが、恒大は同日、契約を解除もしくは中止すると返答してきた。

8.合生創展側は、契約書に則(のっと)って、違約金10億香港ドル(約148億円)を恒大側に請求した。

以上が概ねの経緯である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P横ばい、インフレ指標や企業決算

ワールド

メリンダ・ゲイツ氏、慈善団体共同議長退任へ 名称「

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、今週の米経済指標に注目

ワールド

原油価格上昇、米中で需要改善の兆し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 8

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 9

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中