ノーベル平和賞は香港で踏ん張る独立系メディアに
Hong Kong Free Press Could Win Nobel Peace Prize, and Unleash China's Fury
中国の圧力に抵抗する人々の無数のメモ(2019年7月) 願いも虚しく、今や自由は風前の灯 Jorge Silva-REUTERS
<世界中で言論の自由が試練に直面する今こそ、ノーベル平和賞は香港のフリープレスに与えられるべきだ>
10月8日に発表される2021年のノーベル平和賞には、300を超える個人や組織が候補として推薦されている。そのひとつは、香港のニュースサイトだ。
香港フリー・プレス(HKFP)は、2015年にクラウドファンディングで設立された香港の独立系ジャーナリズムの最後のシンボルのひとつであり、これまで香港の民主化運動や、2020年夏に国家安全維持法が制定されて以降の中国政府による弾圧などを報じてきた。
中国本土ではブロックされて閲覧不可になっている同サイトは、1989年の天安門事件の追悼集会をめぐる攻防や、新疆ウイグル自治区のウイグル人およびその他の少数派民族に対する中国の人権抑圧的な政策などについても詳細に報じてきた。
2021年に入ってからは、香港のメディア王として知られる黎智英が収監された問題や、彼が創業した中国政府に批判的な日刊紙、蘋果日報(アップル・デイリー)が廃刊となった問題を取り上げた。いずれも、香港国家安全維持法の名の下に行われた取り締まりの結果だ。
自由と民主主義を守れ
香港における報道の自由が消滅しつつある中で創設されたHKFPは、自分たちの使命について、ウェブサイト上で次のように説明している。
「我々は大中華圏における最も独立した、かつ信頼に足る英語の情報源を目指している。権力者の声ではなく、声なき者たちの声を広めることを目指し、香港の基本的価値観と自由に関する状況を監視していく。HKFPのチームは恐れることなく、事実を公平に報じることに全力を尽くす」
HKFPをノーベル平和賞の候補に推薦したのは、ノルウェー議会の議員であるオーラ・エルベストゥエン、テリエ・ブレイビクとヨン・グネスだ。ブレイビクは、候補者推薦の締め切りだった1月31日の2日前に、HKFPを候補として申請したことを明かし、HKFPは「中国政府に、香港への行き過ぎたの抑圧の責任を取らせるために不可欠」な存在だと評価した。
3人は推薦状の中で、「香港の自由と民主主義が攻撃を受けている」と主張し、さらに次のように述べた。「HKFPは、香港で独立系メディアを生かし続けるために全力を尽くしている。報道の自由は、国内にも国家間にも平和や友情をもたらすために欠かせないものだ。世界の多くの場所で言論の自由が試練に直面している今こそ、HKFPはノーベル平和賞を受賞するのにふさわしい組織である」