最新記事

フェイスブック

殺人動画を放置するFBは自社の利用規約にも違反中

Facebook Neglecting Graphic Content, Forcing Victims to Relive Tragedies, Complaint Says

2021年10月14日(木)15時40分
レベッカ・クラッパー
フェイスブックのザッカーバーグCEO

モラルが問われ続けるフェイスブックの創設者兼CEOのマーク・ザッカーバーグ Erin Scott ‐REUTERS

<人生最悪の悲劇を何度も追体験させるような動画を削除させるのは、フェイスブックの場合、それを一番観たくない遺族自身の仕事だ>

フェイスブックがそのプラットフォームに投稿された暴力的な犯罪現場などの動画を放置しているため、再びその場面を思い出したくない被害者とその家族が、法的手段を取るなど自ら動かざるをえなくなっていると、殺害されたジャーナリストの遺族が苦情を提出した。

テレビ報道記者アリソン・パーカーとカメラマンのアダム・ウォードは2015年、バージニア州ロアノークの地方局で生放送の最中に元同僚に撃たれ、死亡した。銃撃の映像はフェイスブックとインスタグラムで拡散され、何度も消えてはまた浮上している。

■生放送中に撃たれて死亡したアリソン・パーカー


アリソン・パーカーの父親アンディ・パーカーは10月12日、銃撃の模様を撮影した動画は、暴力を美化するコンテンツの投稿を禁じるフェイスブック独自の利用規約に違反している、と語った。

パーカーの家族は娘の殺害動画の削除をフェイスブックに要請し、同社幹部は実行を約束したが、実際には削除されなかった。そこで家族は12日、連邦取引委員会(FTC)にフェイスブックに対する苦情を申し立てたと、AP通信は報じた。

「フェイスブックと(傘下の)インスタグラムは、自らの規約に反し、暴力的なコンテンツを取り締まる責任を被害者と遺族に押し付けている。遺族はこうした動画の拡散を抑えるために、最悪の瞬間を何度も追体験しなければならない」と、申立書は訴えている。

ネット言論に法的保護

AP通信が報じた詳細は以下の通り。

訴状によると、フェイスブックは自社の利用規約に反する消費者を欺く行為に携わっており、プラットフォームの安全性を守るという言葉とは裏腹に、有害で心を傷つけるコンテンツの削除はユーザーにとってきわめて困難になっている。

アンディ・パーカーはFTCに対する訴えを発表する記者会見で、今後の議会の行動を見守りたいと語り、フェイスブックの元従業員で内部告発を行ったフランシス・ハウゲンの呼びかけの一部を繰り返した。ハウゲンは、フェイスブックが子供たちに危害をもたらし、政治的暴力を扇動し、誤った情報を意図的に拡散したと非難している。

「アリソンの殺害動画がフェイスブック、インスタグラム、YouTubeで共有されたことは、私たちの社会組織を損なう悪質な慣習のごく一部に過ぎない」と、彼は言う。

パーカーは、ソーシャルメディアのプラットフォームに投稿された悪質な言論が長期間放置される原因になっている法律を議会が改正しなければならない、というハウゲンの主張に同意すると語った。

民主共和両党の議員は、25年前の法律によって定められたコンテンツ保護の一部削除を求めている。それは「セクション230」と呼ばれる通信品位法第230条で、フェイスブックのようなインターネット企業を、ユーザーの投稿によって生じる責任から保護するものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中