最新記事

テクノロジー

フェイスブック、「メタバース」実現へ欧州で1万人雇用

Facebook Targets EU Workers to Help Build Metaverse, Bring Social, Economic Opportunities

2021年10月19日(火)20時16分
ゾエ・ストロゼウスキ
ザッカーバーグ

次は「メタバース」での覇権を狙う?フェイスブックのザッカーバーグCEO Andreas Gebert-REUTERS

<フェイスブックが喧伝する次なる技術「メタバース」とは? エンジニアをわざわざ欧州で採用する理由は?>

フェイスブックは10月17日、今後5年間で欧州連合(EU)域内の人材1万人を雇用する計画を発表したとAP通信が報じた。目標は、新たなコンピューティング・プラットフォーム「メタバース」を実現することだ。

同社は10月17日付のブログ記事のなかで、「メタバース」計画について語っている。これは、拡張現実と仮想現実を通じてユニークな社会的・経済的機会をユーザーに提供する、未来志向の仮想世界だという。IT各社が開発に力を入れている。

フェイスブックが雇用を計画する1万人は、メタバースの開発目標を達成するためのものだと、ブログの共著者、ニック・クレッグ国際戦略担当副社長とハビエル・オリバン中核製品担当副社長は書いている。

「メタバースの実現を目指すにあたり、専門性の高いエンジニアの必要性は、フェイスブックにとって、きわめて急を要する優先事項のひとつだ」

APの報道によれば、このメタバースは、無数の人がアバターを使ってリアルタイムでアクセスできるオンラインプラットフォーム。仮想世界のなかに入ったユーザーは、仮想ミーティングを開いたり、仮想の土地や衣類、デジタル資産を暗号通貨で購できる。

フェイスブックの経営幹部は以前からメタバースを、モバイルインターネットに続く大ブームになると宣伝しているが、未来のトレンド予測をめぐる彼らの実績には当たり外れがある。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は4年前に、ヘットセッドを通じて遠くにいる人と仮想バケーションを楽しみ、スマートフォンを使って自宅アパートをバーチャルでリフォームする未来を予想したが、これまでのところ現実にはなっていない。

メタバースの独占は許されないが

一方でフェイスブックは、独占禁止法をめぐる規制や、元社員の内部告発や、誤情報を垂れ流したという批判への対応にも追われている。

フェイスブックの採用担当者は、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド、オランダ、アイルランドを、今回の雇用活動のターゲットにしている。欧州で採用するのは、個人情報の扱いで対立するEUへの配慮、との見方もある。

メタバースの実現を目指すのはフェイスブックだけではない。またメタバースは、ただひとつの企業が所有・運営するものではないことは、フェイスブックも認めている。同社以外の参入者としては、「フォートナイト」を開発するエピック・ゲームズなどがいる。エピック・ゲームズは、メタバース開発に関する長期計画を支える資金として、投資家から10億ドルを調達している。

だが、ちょうど現在のインターネットをめぐる状況と同じように、最終的にはフェイスブックをはじめとする一握りのシリコンバレーの大企業がメタバースを支配し、個人情報を集めて利益を得るために利用するのではないかという懸念もある。
(翻訳:ガリレオ)

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中