最新記事

犯罪

カナダで相次ぐホームレスの無差別襲撃

Homeless Man Shot With Arrow: 'This Level of Callousness and Disregard Is Shocking'

2021年9月29日(水)21時40分
トーマス・キカ
クロスボウ(イメージ)

矢を放ったとみられる近くの非常階段からはクロスボウなどの武器が見つかった  Yuriy_Kulik-iStock.

<コミュニティーの中でいちばん弱い立場のホームレスを狙った犯行に「これほどの無情さと人命の軽視は衝撃的だ」と、地元警官は警戒を強める>

カナダの警察は、9月21日夜にホームレスの男性が矢を射かけられた事件の捜査を進めている。

報道によれば、氏名非公開の22歳の被害男性は、バンクーバーのダウンタウン・イーストサイドにある女性センターの外に立っていたときに、脚に鋭い痛みを感じたという。下を見ると、膝頭のすぐ下に矢が刺さっていたと地元ニュース局のCBCは伝えている。

被害者は、自力で近所の医療施設にたどりつき、そこのスタッフが通報した。被害者の怪我は命にかかわるものではなく、膝の痛みが数日続く程度と見られる。

事件を捜査している警察は、無差別の攻撃だったと考えている。

問題の矢は、近くのビルの非常階段から放たれたようだ。現場を調べた警察は、クロスボウのほか、レプリカのアサルトライフル、照準器、ライト、レーザーなどの武器や付属品が隠されているのを発見した。

「これほどの無情さと人命の軽視は衝撃的だ」と、バンクーバー警察署のスティーブ・アディソン巡査部長は声明のなかで述べている。「それでなくても、ホームレスや住む家のない人たちが、住居のある人よりも犯罪被害者になりやすいことは承知している。犯人を特定して罪を償わせるために、できる限りのことをする」

7月にもホームレスが襲われた

凶器が見つかったこと自体は、ダウンタウン・イーストサイドでは驚きではなかったという。9年にわたってこの地区で勤務してきたアディソンは、警察がそうしたものを発見するのは比較的よくあることだと言う。それでも、この状況は「警戒すべきもの」だ。

「これが無差別攻撃であることは、すべての証拠が示している。被害者がもともとコミュニティでも特に弱い立場の人であることから、我々はきわめて大きな懸念を抱いている」とアディソンは話した。

「矢を放った人物は、(この地区の)住人か訪問者で、警察が到着する前に逃亡したと見られる」とアディソンは続けた。「引き続き証拠を集め、犯人の特定に全力を注ぐ」

バンクーバー警察が9月25日に本誌に語ったところによれば、事件に関する新たな情報はないという。

バンクーバーでは今回の襲撃事件が起きる前の7月にも、イエールタウン地区でホームレスが襲われたばかりだった、とCBCは伝えている。当局は、この2つの事件に関連はないと見ている。

5月には、アラバマ州の3歳の女児が、卒業パーティのさなかにフェンスの向こうから飛んできた矢が胸に刺さって負傷した事件が報じられた。女児はヘリコプターで病院に運ばれて助かった。報道によれば、矢は致命傷となる部位からほんの数センチ外れていたという。

(翻訳:ガリレオ)

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ビジネス

ECB、インフレ予想通りなら4月に利下げを=フィン

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与

ビジネス

英インフレ期待上昇を懸念、現時点では安定=グリーン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中