ミャンマーに迫る内戦危機、民主派の武装蜂起は「墓穴を掘る」結果になる可能性
Myanmar’s Hard Truth
NUGへの連帯を示す市民のデモ(21年4月) REUTERS/Stringer
<国民統一政府が宣言した「自衛の戦争」は、国軍の圧倒的な反撃と国土の荒廃を招く>
ミャンマーに不穏な空気が漂っている。今年2月の軍事クーデターに反発して、民主派が組織した国民統一政府(NUG)が9月7日、全国的な蜂起を呼び掛けたのだ。国際社会は冷静さを保つよう呼び掛けているが、血みどろの内戦が近づいている。
NUGのドゥワラシラー大統領代行は7日、「軍のテロリスト」を追放して「人民を自衛する戦争」を宣言。多数の少数民族組織に、軍を「直ちに攻撃する」よう呼び掛ける一方で、NUGの軍部に当たる国民防衛隊には、各地の「軍事政権やその施設をターゲットにせよ」と具体的な指令を出した。
武装蜂起の呼び掛けは、ソーシャルメディアでは熱狂的に支持されたが、国際機関や外国政府は狼狽している。元国連調査団員らが組織するミャンマー特別諮問評議会(SAC-M)は8日、「7カ月にわたる軍事政権の暴力と国際社会の無策に、NUGと人民がいら立ちを募らせている」ことに理解を示しつつ、事態のエスカレートは「残念だ」と声明を出した。
「暴力はミャンマーの人々の苦しみの原因であって、解決策ではない」と、SAC-Mのクリストファー・シドッティは述べている。「NUGの気持ちは分かるが、その決断が引き起こす事態を、われわれは憂慮している」
米国務省のネッド・プライス報道官やイギリスのピート・ボウルズ駐ミャンマー大使、インドネシア外務省のテウク・ファイザシャー報道官らも、民主派の「自衛のための戦争」に理解を示しつつ、円滑な人道援助のために双方に平和を呼び掛けた。
だが、ミャンマーの民主派が武力闘争の道を選ぶことは、おそらく不可避だったし、多くの意味で、何カ月も続いてきた現実を正式に宣言したにすぎない。なにしろ軍事政権は、民主派との平和的な対話に一切関心を示さず、NUGと国民防衛隊を「テロ組織」と決め付け、民間人を含む1000人以上を殺してきた。
これに対して国際社会は、軍事政権を非難するだけで、それ以上のことをする意欲も能力も示してこなかった。
つまり民主派にとって、本格的な武力闘争は、残された唯一の選択肢だったと言える。「こちらを殺したり、ひざまずかせたりしようとする相手と、どうやって対話をしろというのか。対等な話し合いなど不可能だ」と、ある活動家はツイートした。「歴史を見れば、交渉の試みに限界があることは明らかだ」
だが、民主派が武力闘争を正式な戦略として打ち出したことは、倫理的な問題や現実的な問題を生じさせている。