ミャンマーに迫る内戦危機、民主派の武装蜂起は「墓穴を掘る」結果になる可能性
Myanmar’s Hard Truth
NUGは5月に国民防衛隊を設置したとき、「市民を脅し、標的にし、攻撃してはならない」し、市民がいる場所を標的にしてはならないという行動規範を示した。これは、無差別的な残虐行為を繰り返す国軍とは違うことを明確にするとともに、こうした非道の責任が問われることがなかったミャンマーの文化を正そうという意思の表れだ。
だが、戦闘が激化すれば、正義と不正義を分ける線は曖昧になりかねない。NUGの宣戦布告は、軍当局者や、民間人を含む軍事政権協力者の殺害を暗に奨励していると受け止められても無理はない。
また、軍事クーデター以来、ミャンマーでは無数の民兵組織が誕生してきたが、彼らは国民防衛隊の指揮下にあるわけではない。つまり、NUGが示した行動規範を民兵たちが守る保証は全くない。
さらに9日には、別の倫理的な問題も浮上した。東南アジア諸国のニュースを配信するウェブメディアのニュー・ナラティフによると、NUGの重要メンバーであるササ報道官が、アメリカの銃愛好者によるウェビナーで、手製爆弾の作り方を学んでいたというのだ。
ミャンマー系アメリカ人ジャーナリストのエイミンタンが執筆した記事によると、ササらミャンマーの民主活動家たちは6月、マーク・アンドレ・ラキューなるアメリカ人のオンライン講座を受講して、初歩的なパイプ爆弾や迫撃弾の作り方を学んだという。どちらも市民を巻き添えにしかねない無差別的兵器だ。
「NUGが(ミャンマーの正式な政府として)民主的な正当性を獲得しようとするなか、軍事政権に対する『人民を自衛する戦争』が、どのように位置付けられるのか疑問が生じる」と、エイミンタンは結論付けている。
ただし武力闘争を実践しようとする民主派は少数派で、大多数は大規模なストなど非暴力的な抵抗運動を展開しているという見方もある。
武力衝突のエスカレートは、NUGの政治的選択肢を狭めることにもなる。NUGはミャンマー政府として国際的な承認を得たいと考えているが、今回の宣戦布告で、その実現性は著しく小さくなった。
それに、いかに大義があっても、その戦いが成功する保証はない。にわかづくりの国民防衛隊はもとより、少数民族の武装組織はそれぞれ目標や利害が異なり、国軍に対して足並みのそろった戦いを展開できるかは分からない。
国軍がNUGの宣戦布告にひるむとも思えない。むしろ圧倒的な武力で反撃してくる可能性が高い。そうなれば、「もっと激しく長期的な内戦となり、大虐殺によって相手を消耗させる戦い方がまかり通るようになるだろう」と、長年ミャンマーの人権問題に取り組んできたデービッド・スコット・マティソンは語る。
その消耗戦によって残るのは、荒廃だけだ。
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