新たな超大国・中国が、アメリカに変わるテロ組織の憎悪の標的に
China Is the New Target
状況は今後、もっと深刻になるだろう。アフガニスタンからのテロ輸出を防いでいた米軍が撤退した以上、中国は自力で自国民の命と自国の利権を守らねばならない。
中国は従来も、アフガニスタンの南北に位置するパキスタンやタジキスタンで、軍事基地の建設や兵力増強を支援してきた。タジキスタンには中国軍の基地も置いた。アフガニスタン北部のバダフシャン州でも政府軍の基地を建設したが、これはタリバンに乗っ取られたものと思われる。
決して大規模な活動ではないが、全ては米軍の駐留下で行われた。米軍が治安を守り、武装勢力を抑止し、必要とあれば中国人を標的とする攻撃を防いでもきた。18年2月にはバダフシャン州で米軍が、タリバンやETIMのものとされる複数の軍事施設を攻撃している。
今後は、そうはいかない。イスラム過激派の怒りを一身に引き受けてきたアメリカはもういない。これからはイスラム過激派とも民族主義的な反政府勢力とも、直接に対峙しなければならない。
パキスタンのシンド州やバルチスタン州で分離独立を目指す少数民族系の武装勢力は、中国を21世紀の「新植民地主義国」と見なしている。中央政府と組んで自分たちの資源を奪い、今でさえ悲惨な社会・経済状況をさらに悪化させている元凶、それが中国だと考えている。
カラチでの中国人襲撃について名乗りを上げたバルチスタン解放戦線は犯行声明で、「中国は開発の名の下にパキスタンと結託し、われらの資源を奪い、われらを抹殺しようとしている」と糾弾した。
高まるウイグルへの注目
ジハード(聖戦)の旗を掲げるイスラム過激派は従来、アメリカと西欧諸国を主たる敵対勢力と見なしてきた。中国の存在は、あまり気にしていなかった。しかし新疆ウイグル自治区におけるウイグル人(基本的にイスラム教徒だ)に対する迫害が伝えられるにつれ、彼らの論調にも中国非難が増え始めた。
そうした論客の代表格が、例えばミャンマー系のイスラム法学者アブザル・アルブルミだ。
激烈にして巧みな説教者として知られるアルブルミは15年以降、米軍のアフガニスタン撤退後には中国が新たな植民地主義勢力として台頭すると警告してきた。支持者向けのある声明では「イスラム戦士よ、次なる敵は中国だ。あの国は日々、イスラム教徒と戦うための武器を開発している」と主張していた。
別のビデオでも、「アフガニスタンではタリバンが勝利した......次なる標的は中国になる」と言い放っている。