米軍のバグラム空軍基地放棄がテロを世界に拡散させる
一方、8月25日付のCNNの英文情報あるいはその日本語版によれば、ISIS-Kのメンバー数百人が刑務所から脱走した可能性があるとのことなので、ペンタゴンの報道官の言葉とはかなり違う。アフガン政府の元当局者によると、バグラム刑務所では7月の時点でタリバンやアルカイダ、ISISのメンバーや犯罪者など約5000人が服役していたとのこと。
重要なのは24日にはバイデン大統領は「ISIS-Kが空港を狙って米軍や連合軍および罪のない市民を攻撃しようとしている」と述べていたことだ。バイデンは予めテロが起きるのを知っていたことになる。
中国の報道が基本的に嘘ではなかったことを証拠づける英文情報は拾いきれないほど多数あるが、これではクルーズ議員が「バグラム空軍基地放棄は壊滅的(カタストロフィー的)な政治決定だ」とバイデンを非難したのもうなずける。
世界にテロ集団が拡散していく
なぜ今ここでこの問題を取り上げたかと言うと、私たち日本を含めた世界各地にテロ集団が拡散されていく危険性があるからだ。
脱獄にしろ釈放にしろ、米軍が無責任な形でバグラム空軍基地を放棄したことが、結果的にテロ集団をアフガニスタンに解き放ち、アフガニスタンの一般市民に扮装して「避難民」としてカブール空港から世界各地に飛んで行ったかもしれないし、また地続きのパキスタンやタジキスタン、トルクメニスタン、イランなど、どこにでも山岳地帯に潜り込みながら逃げていくことは可能だろう。
だから今後世界は再びテロの恐怖にさらされる危険性を孕んでいる。
それだけではない。
米軍が完全にカブール空港を撤退する前に、もう一度大規模なテロ爆発があるかもしれないという危険が目の前に迫っているということに注目しなければならないのである。
もちろん何も起きないことを心から祈っているが、今日(30日)か明日(31日)までには大規模テロがあるかもしれないので、世界はそのつもりで警戒しておいた方がいいだろうと思った次第だ。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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