先進国の身勝手な3回目接種はかえって危険な変異株を生み出しかねない
Focus on Vaccine Boosters Over Global Immunization Risks Deadly Variants
「そういう人々を無防備なままにしておいてはならないが、たいした人数ではない。高所得国において、ワクチンで正常な免疫を獲得した人々の免疫をさらに高める追加接種を行う前に、予防接種を受けていない世界人口の75%にワクチンを提供しなければならない」と、キムは言う。
「結局のところ、生物学的脅威は存在する。つまり、現在進行中の制御不能な感染爆発が続けば続くほど、より伝染性、致死性、ワクチン耐性の高い変異株が出現する危険が高まるのに、世界の大半は感染抑制の手段をもたない」
「だから、われわれは先が見えない状態だ。WHO(世界保健機関)が承認したワクチンは、現時点で知られた変異株に対してまだ有効だが、現在のような感染爆発は、200億ドル以上かけたワクチン開発の成功を台無しにする変異株を発生させる可能性が高い」と、キムは述べた。
WHOも、自国での追加接種を優先する政府には批判的だ。
8月10日の声明の中で、WHOはブースター接種の必要性はワクチンの世界的な供給状況を事実に即して考慮すべきだと警告した。
「多くの人がまだ1回目の接種を受けていない状況で、自国の人口の大部分にワクチンの追加接種を提供することは、世界的な平等の原則を損なうものである。1回目の接種を早期に普及させることよりも、追加接種を優先することは、パンデミックの世界的な終息の見通しを損ないかねず、全世界の人々の健康、社会的、経済的幸福に深刻な影響を与える可能性がある」と、声明は述べた。
疑問視される必要性
そもそもブースター接種は必要なのか。8月13日付のガーディアン紙に掲載されたコラムで、グローバル・ワクチン・アライアンス(GAVI)のセス・バークレー事務局長と、ワクチン政策に関する政府の諮問委員会で座長を務めるオックスフォード大学のアンドリュー・ポラード教授は、何百万人もの人々がまだ1回目のワクチン接種を待っているときにブースター接種を開始すべきではないと述べ、追加接種の必要性を裏付ける確かな証拠はまだないと指摘した。
「ある富裕国が大規模な追加接種を行えば、追加接種は必要なものだというシグナルが世界中に送られる。そうなれば多くのワクチンが追加接種に使われるようになり、一度もワクチン接種を受ける機会を持てなかったために死ぬ人がさらに増えるだろう」と、2人の科学者は書いた。
米食品医薬品局(FDA)と疾病対策センター(CDC)の当局者は、免疫系の弱い人々のための3回目の接種を承認することと、免疫系が正常な人々に対する追加接種の必要性とは別の問題だとしている。
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