新型コロナ根絶は理論的に可能...集団免疫なくとも NZ研究
この状態をより多くの国と地域で実現するためには、入国者のコントロールなどの施策に加え、やはりワクチンの普及による集団免疫の獲得が鍵となる。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で公衆衛生を研究するロバート・キム=ファーレイ医学教授は、米医学情報誌の『メディカル・ニュース・トゥデイ』に対し、「真の根絶に向けた唯一にして最大の障害は、コミュニティ内での新型コロナ感染を終息させるという意味において、完全な集団免疫を達成するために極めて高いワクチン接種率を達成・維持する必要がある点でしょう」と述べている。
集団免疫なくとも
一方、今回の研究を主導したウィルソン博士は、たとえ集団免疫の達成が難しくとも新型コロナの撲滅は可能だと考えている。博士は天然痘の根絶プログラムを例示し、感染者を中心とした一定距離内に住む住民に絞ってワクチン接種を行う「リング・ワクチネーション」の方式でウイルスの制圧に成功したと指摘する。国レベルでの集団免疫なくして撲滅に成功した実例だ。供給量が限られる途上国などを中心に、新型コロナにおいても有効な手法となる可能性はある。
ただし、ここにきて感染力の強いデルタ株が出現し、集団免疫の獲得は幻想だとの捉え方も出ている。英ガーディアン紙によると、オックスフォード・ワクチン・グループのトップはデルタ株により、集団免疫の達成が「絶対に有り得ない」状態になったとコメントした。ワクチンの接種を完全に終えた場合、感染者との接触後に陽性と判定される率は未接種者よりも低下するが、それでも一定の割合で突破感染が発生してしまうためだ。
今後も変異株とのいたちごっこになるとの見方があるが、ウィルソン博士としては、将来的にワクチンで制圧可能だと考えている。ウイルスの変異能力はいずれかの時点で限界に達し、その時点で開発された新規のワクチンによって終止符を打てるはずだという。根絶には長年を要する可能性もあるが、粘り強く公衆衛生のしくみを改善してゆくことが他の疫病対策も含めたメリットにつながる、と博士は訴えている。