最新記事

映画

少年が母親のために自分を犠牲に...映画『ウオーターマン』の新しさ

A Family Film With Diversity

2021年5月20日(木)18時51分
H・アラン・スコット
イギリスの俳優デービッド・オイェロウォ

子供時代にのめり込んだファンタジー映画の影響は? AUSTIN HARGRAVE

<初監督作品のファンタジー『ウオーターマン』で、家族の愛と自己犠牲を描いたD・オイェロウォの挑戦>

ファンタジー映画はハリウッドの定番ジャンルの1つだが、これまで真に多様性のあるストーリーを表現してきたとは言い難い。

しかし、『大統領の執事の涙』などで知られるイギリスの俳優デービッド・オイェロウォが初監督を務めた『ウオーターマン』(北米では5月7日に公開)がその状況を変えるかもしれない。

この映画は、家庭で過酷な日々を送り、ファンタジーの世界に救いを見いだす男の子ガナー(ロニー・チャビス)の視点で描かれる。オイェロウォは少年の父親エイモス役を演じる。母親役はロザリオ・ドーソンだ。

本誌H・アラン・スコットがオイェロウォに話を聞いた。

――1980年代の子供向けのファンタジー映画やアドベンチャー映画に影響を受けた面はあったのか。

私もそうした映画を見て育った。冒険の旅に連れていってくれるし、何かを考えさせてくれるのがとてもいい。だから『ウオーターマン』のストーリーに魅力を感じたのに違いない。この作品も家族が試練に直面し、ファンタジーと冒険と友情の要素がある。

――『ウオーターマン』を初監督作に選んだ理由は?

心に響くものがあった。この物語の核を成すテーマは、愛、そして愛のために払う犠牲だと思う。11歳の少年が母親のために自分を犠牲にする覚悟を決める。その点に魅力を感じた。

――あなたが演じるエイモスは、いわゆる「男性的」な物事に関心を持たない息子への接し方に苦労する。主人公の少年の物語だけでなく、父親の心の旅を描くことにも重要な意味があったのか。

私には3人の息子と1人の娘がいるが、なぜか息子と娘で扱い方が違ってしまう。微妙な問題なのだが。親としては毎日が失敗の連続だ。でも、自己犠牲の精神を持って子供たちを愛することは忘れないようにしている。大事なのは、自分自身のニーズや欲望より子供たちを優先させること。エイモスはそうしていると思う。

――大物司会者のオプラ・ウィンフリーがこの映画のエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。どのように企画を売り込んだのか。

『大統領の執事の涙』で母親と息子を演じて以来、オプラと私は長年の友人関係にある。企画については早い段階で話していた。オプラが参加を決めたのも、私にとって大切なプロジェクトだと理解していたからだと思う。

オプラは、幅広い層の観客を引き付けられる作品になっているかを見極めるための試金石のような存在でもあった。その点でも貴重な役割を果たしてくれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン大統領と中国外相が会談、王氏「中ロ関係は拡

ワールド

米下院2補選、共和が勝利へ フロリダ州

ワールド

ロシア製造業PMI、3月は48.2 約3年ぶり大幅

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中