最新記事

新型コロナウイルス

インド未曾有のコロナ危機、病床は鉄道車両、酸素は海外援助

India Using Train Cars to Treat COVID Patients as Hospitals Run Out of Beds

2021年4月28日(水)17時15分
ローレン・ギエラ
2人のコロナ患者が1つのベッドを共有(ニューデリー)

病床不足で2人のコロナ患者が1つのベッドを共有(4月15日、ニューデリー) Danish Siddiqui-REUTERS

<1月にコロナに勝利宣言をしたインドだが、変異株による感染拡大で病床も酸素ボンベも足りずに患者が死んでいく>

インドでは4月27日、1日の新型コロナウイルス感染症の新規感染者が32万人を超え、累計の感染者数は1760万人超とアメリカに次ぐ世界2位になった。

病院では、酸素ボンベや集中治療室の病床が不足している。多くの人は、間にあわせの仮設施設で治療を待ち、そのまま亡くなっていく人も少なくない。火葬場は足りず、集団での埋葬や火葬を余儀なくされている。

パトカーの先導で酸素を運ぶトラック


インド当局は、鉄道車両を隔離病棟に改造している。ピユシュ・ゴヤル鉄道相は先月、改造車両の写真をツイートした。


「これからは鉄道が、患者が安心して療養できる衛生的な環境を提供することになる」とゴヤルは述べていた。

鉄道は、インド全土で大いに必要とされている酸素も運んでいる。

インドの状況はきわめて悲惨で、4月26日には、医療緊急事態対策に関する政府委員会のトップを務めるDVポール博士が、ウイルス拡散を防ぐために自宅でもマスクを着用するよう国民に促したほどだ。

1日あたり感染者数は、26日まで「世界最多」を5日連続で記録した。

インド保健省の報告によれば、過去24時間でさらに2771人が死亡した。1時間ごろに約115人が新型コロナで死亡している計算だ。死者総数は19万7894人に増え、米国、ブラジル、メキシコに続いている。しかもこの数字は、実際より少ない可能性が高いという。

世界が支援

インド外務省広報官のアリンダム・バグチは27日、イギリスからインドに到着した医療支援物資の最初の便の写真をツイッターに投稿した。支援物資には、人工呼吸器100台と酸素濃縮装置95台が含まれている。

そのほか、アメリカやドイツ、イスラエル、パキスタンなどの国も医療支援を約束している。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長が「悲痛の域を越えている」と表現したインドを助けるために、酸素、診断検査、治療、人工呼吸器、防護具を提供すると述べている。

インド政府は2021年1月28日、全土の約2割の地域で、1週間連続して新規感染者が報告されなかったことを理由に、パンデミックに対する「勝利宣言」を行っていた。だが、新たな変異株の出現により感染は再加速。政権の土台を揺るがしている。

インド政府は、軍にも支援を要請。インドの国防参謀長を務めるビピン・ラワット大将によれば、軍が備蓄している医療用酸素を提供するほか、医師の負担を軽減するため、医療分野の退役軍人を医療施設に派遣するという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、鉱物資源協定まだ署名せず トランプ氏「

ビジネス

中国人民銀総裁、米の「関税の乱用」を批判 世界金融

ワールド

米医薬品関税で年間510億ドルのコスト増、業界団体

ワールド

英米財務相が会談、「両国の国益にかなう」貿易協定の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中