最新記事

アメリカ経済

トランプ大減税を巻き戻し、格差縮小を目指すバイデンの法人税増税案

Top US CEOs Open to Corporate Tax Rate of 28%, Biden Says Trump Cuts Failed

2021年4月9日(金)16時51分
ベンジャミン・フィアナウ

トランプの減税措置は国際税制の改正と米企業の国内回帰につながったものの、米企業のうち、減税によって浮いた資金を労働者の賃金引上げや投資に回した企業はごく一部で、多くの企業は浮いた分を株主への配当や幹部への賞与に充てた。2019年に米財務省と行政管理予算局が発表した報告書は、トランプ減税の影響で、アメリカの財政赤字がわずか1年で26%も拡大したと指摘した。トランプが軍事支出を大幅に増やしたことに加えて、最も裕福な企業や個人を対象とした減税措置によって税収が減ったことが大きな原因だった。

「2017年に可決された減税案は、とても重要な教訓だ」と、大統領経済諮問委員会のメンバーであるヘザー・ブーシーはあるインタビューで述べ、こう指摘した。「(トランプ政権の)税制改革法案には民間部門の投資を促進する効果がなかった。我々はそれを覆そうとしているのだ」

バイデンは大統領選の際、年収40万ドル以下の世帯には増税を行わないことを公約に掲げていた。そのため共和党とロビイストが議会を説得して法人税率の引き上げ案を潰せば、民主党にとってはインフラ投資計画の財源確保手段が大幅に制限されることになる。バイデンは今週、アメリカの中間所得層が税率20%以上の税を支払っているのに対し、大手企業55社が「さまざまな抜け穴を利用し、連邦法人所得税を1セントも払っていない」と指摘し、「あまりに不公平だ」と批判した。

景気回復のために「投資は重要」

ホワイトハウスの複数の側近は、バイデンの法人税率引き上げ案に対する共和党の執拗な攻撃については、心配していないと述べた。企業や米国民から、十分な支持が得られていると彼らは確信している。

リフトの共同創業者であるジマーはMSNBCに対して、「再び米国内と米経済に投資を行っていくことは、重要なことだと思う。経済が成長すれば、雇用も増えて人の動きも活発になる」と述べた。

だが米大手企業は2017年の法人税率減税措置の大きな恩恵を受けてきたため、米商工会議所とビジネス円卓会議は、バイデンの法人税率引き上げ案に強い反発を表明した。

連邦法人所得税の税収は1950年代半ば以降、着実に減少しており、米商務省経済分析局の最近のデータによれば(50年代半ば当時の)対GDP比およそ4%から、現在は1%未満に落ち込んでいる。

20250401issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月1日号(3月25日発売)は「まだ世界が知らない 小さなSDGs」特集。トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中