全米各地で子どもの成績低下が深刻に コロナで長引く在宅学習が影響
コンサルタント会社マッキンゼー・アンド・カンパニーは12月、25の州で小学校の生徒を対象に実施される算数とリーディングのスキルを評価する「i-Ready」試験の結果を分析した。同社では、数学においては、白人の生徒の場合、パンデミックがなかった場合の学習進度に比べて1─3カ月の遅れが生じていると推測している。有色人種の生徒の場合、遅れは3─5カ月に広がる。
ジョンズ・ホプキンス大学教育学部のジョナサン・プラッカー教授は、学習の遅れを取り戻すには少なくとも2年かかると考えている、と話す。
「何とか方法を見つけて生徒たちが遅れを取り戻しはじめられるよう支援しなければ、ギャップはますます広がっていくだろう」とプラッカー教授は言う。
成績低下の原因は
成績には判定者の主観が影響する場合もあり、必ずしも理解度を反映しているとは限らない。生徒が授業に出席しなかったために「F」がつく場合もある。だが最近では、悪い評点が家庭でも学区でも懸念を引き起こしている。1つには、そうした成績が生徒の自信をそぎ、卒業を遅らせ、大学進学への展望が狭まってしまうからだ。
シカゴのテンプル・ペインさん(48)は12月、学校長の職を辞した。娘のトリスティンさんが、これまで「A」を続けて来た7年生の数学で「D」を取ってしまったからだ。
「娘にとっては大ショックだった」とペインさんは言う。「いま彼女は『自分は出来ない子だ』という態度になっている」
シカゴ学区では、小・中学生17万2000以上のうち14.3%が、今年度の2学期に数学で「D」か「F」を付けられている。昨年度に比べ4.6ポイントの増加である。
マイノリティや低所得層にとっては、勉強のための決まったスペース、安定したインターネット接続、大人による持続的な監督といった学習に適した家庭環境を用意することがさらに困難になる場合がある。
また不利な境遇にある家庭は、COVID-19による影響を不釣り合いに受けやすくなっており、子どもたちは学習面に限らず困難を抱えている。
ケンタッキー州のジェファーソン郡公立学校区では、今月、2020年3月以来となる対面学習が一部再開されたが、9万6000人の生徒のうち約63%が、無料・低額給食制度を利用している。今年度前期、この学区で「不十分」と表現される落第点を取った生徒の数は、昨年前期に比べて2倍以上増加した。
リリアナ・アンダーソンさん(8)は、ジェファーソン郡で低額給食制度を利用している生徒の1人だ。ルイビルで育児指導員として働いていた母親のロレイン・アンダーソンさん(42)によれば、リリアナさんはパンデミック以前から読み書きには苦労していたというが、昨年秋にはその不振がさらに深刻になった。1年生のリリアナさんには基本的なコンピュータースキルが身についておらず、オンライン授業には向いていなかったからである。
ロレインさんは、今学期は自身でリリアナさんを教えることを選び、学用品を揃える資金を集めようとクラウドファンディング「ゴーファンドミー」のページも開設した。
「娘を対面授業に戻してやりたいが、(その前に)彼女に期待される学力をつけさせたい」とロレインさんは言う。「学校が再開されたからといって、そのまま娘を2年生のクラスに放り込むわけにはいかない」