最新記事

動物

苦痛を長引かせるやり方でタヌキを感電死させる中国毛皮農場

2021年3月18日(木)18時06分
アリストス・ジョージャウ
檻に入ったタヌキ

毛皮用に1頭ずつ狭い檻で飼育されるタヌキ Viktor_Kitaykin/iStock

<残酷なだけではない。コロナ後も衛生管理は杜撰でいつまた新たなパンデミックの発生源になってもおかしくない>

毛皮用に野生動物を飼育する中国の数カ所の毛皮農場で、動物が「極端な苦痛」を受けていることを示す動画を、動物保護団体が公開した。タヌキに高電圧の電気ショックを与え、苦しみながら死なせるなど、怖気を震うような場面も収録されていた。

世界最大級の動物福祉団体「ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル(HSI)」は2020年11月と12月に中国の13カ所の毛皮農場を調査し、映像を撮影した。新型コロナウイルスの発生後、中国は野生動物の飼育と取引に関する規制を強化したが、HSIが調べた農場はいずれも中国政府の定めたルールすら守っていなかった。

農場の1つでは、高電圧の電池につないだ刺股(さすまた)のような器具を使い、タヌキを感電させる殺処分が行われていた。その映像を見た専門家は、タヌキは体が麻痺しているものの、意識はあり、苦痛を長引かせる残酷な殺し方だと分析した。

肉は食用に

HSIの顧問を務める獣医のアラステア・マクミランは、「この動画の動物たちは、脳ではなく、体に致命的なダメージを及ぼす電気ショックをかけられており、心臓発作のように、数分間ひどい苦痛を味わった挙句に息絶えた可能性が高い」と声明で述べている。

「即死ではない。電気ショックで体は金縛りになっても、意識は残っていて、感電に伴う強烈な痛みを感じたはずだ」

撮影された映像には、何もない狭い檻に入れられたキツネがぐるぐる回ったり、せわしなく動いたりする様子もとらえられている。人間であれば、精神に異常を来したとみられる兆候だ。

HSIイギリス事務局のクレア・バス事務局長は、「これが、毛皮農場の動物たちの生死に関する胸が悪くなるような現実だ」と声明で訴えた。「毛皮業者が描こうとしている魅惑的なイメージとはかけ離れた実態を直視してほしい」

動画では、農場関係者の1人が、毛皮をはいだ後、動物の肉を食用として地元の飲食店に売っていると明かしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中