最新記事

トランプ政権

アメリカの新型コロナ死亡者の40%は「トランプのせい」と報告書

40% of U.S. COVID Deaths Could Have Been Averted If It Weren't for Trump

2021年2月12日(金)16時00分
ジェイソン・レモン

トランプは新型コロナの脅威を公然と否定していた Tom Brenner-REUTERS

<歴史ある医学誌ランセットに発表された報告書がトランプ政権のコロナ対策を厳しく糾弾>

2020年に新型コロナウイルスで死亡したアメリカ人のうち約40%は、ドナルド・トランプが大統領でなければ死を免れていただろう――医学誌に新たに発表された報告書が、そう指摘した。

2月11日発行の医学誌ランセット(世界で最も歴史があり知名度も高い医学誌)に発表されたこの報告書は、パンデミックが起きる前の2018年で見ても、ほかのG7諸国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス)の人口あたりの死亡率と比較すると、アメリカでは46万1000件の回避できるはずの死亡例が発生していたと指摘。アメリカの新型コロナの死亡率がこれらの国々と同程度だったと想定した場合、2020年の死亡者数は40%少なかっただろうと結論付けた。

報告書は、「アメリカは世界的なパンデミックの影響を異常なほど過度に受けており、2021年2月上旬の時点で感染者数の累計が2600万人以上、死亡者は45万人を超えている。死亡例のうち約40%については、アメリカの死亡率がほかのG7諸国の平均と同程度であれば防げた可能性がある」と説明している。

トランプ政権下で無保険者が増加

「多くの感染や死亡は、回避できたはずだった。しかしトランプ大統領(当時)は国民にパンデミックとの闘いを呼び掛けることはせず、むしろその脅威を(個人的には認識していたにもかかわらず)公然と否定し、感染が拡大するなか適切な行動を妨害し、国際社会と協力しなかった」

さらに報告書は、過去4年間の米政府の姿勢についてはトランプに責任があるものの、アメリカにおける多くの問題は何十年も前からあるものだと指摘。その背景には、共和党と民主党、いずれの大統領も追求してきた新自由主義(ネオリベラリズム)に基づく政策があると述べている。

ほかの先進国の国民はアメリカ人より健康で長生きしているのに、アメリカではここ数年、平均寿命が短くなる傾向が続いている。報告書はその原因として、気候変動や医療分野の規制緩和、医療費の高騰、無保険者が多いことや、経済格差、人種差別などさまざまなマイナス要因を挙げている。

アメリカの無保険者は、トランプの大統領就任時にすでに2800万人に上っていたが、トランプ政権下でさらに230万人増加した(そのうち72万6000人が未成年の子供)。さらにパンデミックのなかで人種間格差が広がり、黒人の死亡率は白人の1.5倍にまで上昇したほか、ラテンアメリカ系の平均寿命は3.5年短くなった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

経済対策の財政支出21.9兆円、事業規模は39.0

ビジネス

独VW、リストラ策巡り3回目の労使交渉 合意なけれ

ビジネス

午後3時のドルは155円前半へ下落、株安と日銀総裁

ビジネス

日経平均は続落、一時400円超安 米エヌビディア決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中