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クーデター

全権握ったミャンマー軍司令官ミン・アウン・フラインとは何者か

2021年2月3日(水)12時12分

昨年11月の総選挙後、ミャンマー国軍トップは近日中の引退を迫られていた。国軍が支持する政党は劣勢に追い込まれ、国際社会からは、ムスリム系ロヒンギャに対する戦争犯罪の責任を問う声が高まっていた。ミャンマー・エーヤワディで2018年2月、代表撮影(2021年 ロイター)

昨年11月の総選挙後、ミャンマー国軍トップは近日中の引退を迫られていた。国軍が支持する政党は劣勢に追い込まれ、国際社会からは、ムスリム系ロヒンギャに対する戦争犯罪の責任を問う声が高まっていた。

今月1日、ミン・アウン・フライン総司令官は、クーデターにより民主的選挙を経た指導者アウン・サン・スー・チー氏を拘束し、全権を握った。アウン・サン・スー・チー氏は、数十年続いた軍政への抵抗に対する評価に支えられ、再び選挙で地滑り的大勝を収めていた。

国軍によるクーデターは総選挙に不正があったことを理由にしているが、選挙管理委員会は否定的だ。国軍は、状況が是正されれば公正な選挙を行い、勝者に権限を委譲すると述べている。

ヤンゴンで活動する外交官は、ミン・アウン・フライン氏の動機は個人的な利害だと指摘する。

匿名を条件に取材に応じたこの外交官は、「憲法に定める方法では、彼がこの政権で主導権を握る道は存在しなかった」と語る。

ミン・アウン・フライン氏も国軍も、クーデターに個人的な野心が影響した点については何もコメントしていない。ミャンマーはロヒンギャをめぐる戦争犯罪の告発を否認しており、国軍の行動はテロとの戦いの一環だったと述べている。

小柄な体格のミン・アウン・フライン氏は、丸い縁なしメガネを掛けていることが多く、東南アジア有数の常備軍の司令官というよりは事務員を思わせる風貌である。

軍人よりも政治家と見られることを望んでいた兆候なのか、彼はフェイスブックを愛用しており、選挙運動に励む政治家のように仏教寺院への寄付も重ねていた。

一部の評論家のあいだでは、これまでスー・チー氏率いる与党・国民民主同盟(NLD)が握っていた大統領のポストを同氏が狙うのではないかという観測もあった。

だが、国軍寄りの政党は11月の総選挙でNLDに大敗を喫し、ミン・アウン・フライン氏自身も、2016年に5年間延長された総司令官の任期切れが迫り、引退が目前となっていた。

バンコクで活動するヒューマン・ライツ・ウォッチのフィル・ロバートソン氏は今回のクーデターについて、総選挙で「これほど分かりやすい敗北を喫した」ことに対する国軍の焦りがきっかけになっている、と指摘する。

「蚊を殺すのにハンマーを取り出すようなものだ。自分たちに都合良く動かないのであれば民主主義の実験に乗る気などない、ということを国軍はこの上なく極端な形で示してしまった」とロバートソン氏は言う。

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