最新記事

教育

不登校はもう問題行動ではない 情報化社会で変わりゆく学校の役割

2021年2月3日(水)13時20分
舞田敏彦(教育社会学者)

自宅での学習が出席扱いと認められる不登校児も増えている。<表1>は、不登校が第2の上昇期に入る前の2012年と、最新の2019年の比較だ。

data210203-chart02.png

一番上を見ると、前年度からの継続不登校児が増えている。不登校児全体に占める比率は、2012年度は48.5%だったが、2019年度では51.0%と半分を越えている。不登校の増加と同時に、長期化も進んでいるようだ。

学校外や自宅での学習を、指導要録上の出席として認めようという機運も高まっている。学校外のフリースクール等での学習が出席扱いとされた不登校児は1万5374人から2万5535人、自宅でのIT学習が出席扱いと認められたのは156人から552人へと増えている。不登校に対する見方が変わってきていることの表れだ。全数に対する率はまだまだ小さいが、今後は高まりこそすれ、その逆はないだろう。

学校が用なしになることはない

情報化社会においては、学校だけが教育の場であり続けることはできない。学校の領分はどんどん縮小し、代わって人々の自発的な学習ネットワークが台頭してくるだろう。1970年代にして、イヴァン・イリッチは著書『脱学校の社会』においてこう予言した。それが現実のものとなろうとしている。

しかし、教育の専門機関としての学校が全くの用なしになるとは予想し難い。前近代社会と違い、高度化した社会における人間形成(社会化)は、学校という専門機関において、教員という専門職の手でなされなければならない。ただ、その聖域性(稀少性)が薄れつつある現在、学校でしかなし得ないことを明確に説明できないといけない。一方通行の授業だけなら自宅で動画を見ればいいと、生徒は登校してこない。

「アクティブ・ラーニング」は新学習指導要領のキーワードだが、生徒参加型の「濃い」授業の構築が求められる。先月に出た中央教育審議会答申の言葉でいうと「協働的な学び」、リアルな触れ合いでの学びだ。今ほど、教員の専門性が求められている時代はない。

<資料:文科省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中