ミャンマー、国軍が鉄道職員に発砲か 兵員輸送の線路での抗議デモに圧力
こうした国民の反発に加えて国軍を苛立たせているのがCDMという公務員の職務不服従の動きの拡大だ。
ヤンゴン市内では主な民間銀行は銀行員が職場を放棄したため銀行業務が滞っているほか、中央官庁やその出先機関でも公務員が「不服従運動」に共鳴して各種公的業務の停滞が顕著になっているという。
一方で、2月13日にはヤンゴン市内南部にある血液センターの看護師寮が治安部隊の急襲を受け、看護師らが拘束される事件も起きている。これは看護師らがCDMに参加していたため当局の怒りをかったといわれている。
この看護師寮急襲も付近の住民が異変に気付いて自宅などで鍋釜を打ち鳴らす抗議活動"タンボウンティー"をしたことで発覚したという。
昼は市民、夜は治安部隊が「主役」
最近のミャンマーでは明るいうちは市民のデモや抗議活動が市内各所で展開され、公務員らもCDMに賛同して職場放棄などで参加している。しかし夜間になると様相は一変し、治安部隊がデモの主催者、反対運動指導者、CDM参加公務員などを事情聴取や身柄の拘束をし、さらに公務員宿舎、一般住民の集合住宅などへの捜索を繰り返す状況が続いている。
こうした事態に住民側も共同で夜警を配置したり、何か異変があった場合には"タンボウンティー"で動員をかけたりするなどの自衛策に乗り出しているという。もっとも銃器で完全武装した治安部隊に対しては、住民らの抵抗にもおのずと限界があるのが事実である。
今後は、現在拡大を続けているクーデター反対の抵抗運動を治安部隊がいつ武力による大規模な排除に乗り出すか、その結果として流血の事態となるかが焦点となるだろう。
[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など